ハレイの元に宿る魔法陣が光を発し、数多の熱線が拡散、シホたちを追尾するように放たれる。
「来るぞ! シホ!」
「うん! メテオラは下がって自分の身を守ることに専念して!」
「くっ……すまなイ。頼むわよ、二人とモ!」
シホとミーティアが法器を駆り、メテオラはクーヴァを召喚する。シャワーのように注ぐ魔力の矢を二人の魔女が避け続け、黒き獣が身を挺して受け止め、払い落とす。
「ふふ――さすがに三等星級の魔女ともなるとそう簡単には堕ちませんか」
そう言ってハレイは更なる魔法を放ち続ける。
新たな追尾弾が二手に分かれ――シホとミーティアに向かって飛翔する。
「くっ……こいつは反撃するのも骨が折れそうだぜ……」
背後に殺到する熱線を見ながらミーティアが漏らす。
「ミーティアっ! こっち!」
上空から響く声。見上げると、同じく螺旋を描きながら執拗に迫る矢を引きつれたシホの姿が目に入った。
「……なるほど、その手があったか。頼りにしてるぜ……シホ!!」
ミーティアが機首を上げ、シホの正面へと向かってグリップを捻る。
それを見届け、シホも更に――加速。瞬く間に二人の距離は詰まり、互いの顔がはっきりと瞳に映る。双方の背後に直進運動となった数多の熱線が迫り――法器の先端同士が接触する寸前、シホが上体を捻り、ミーティアが僅かに機体を上げる。シホの天地が入れ替わり、赤い法器の傍らをすり抜ける。
そして正面から激突した熱線同士が火花を散らし――消える。
「攻守交代だ、いくぜ!」
上空へ疾走し、小型法器を抜いたミーティアが紅の魔力をハレイに放つ。
さすがにハレイはこれを避け――
「確か――ステラの法器。スター・バスターでしたか。乗りこなせる魔女が他に現れるとは……思いませんでしたよ」
感心したように唸る。そこに――
「ステラの――星雲長の娘を、甘く――見ないでッ!」
シホが魔力砲弾を放つ。ステラが一瞥し――
「――とはいえ、さすがにあなたの魔力では最大出力での砲撃は出来ないようですね」
魔法陣から複数の追尾弾を放ち、これを相殺する。
「あなたにできるのは私の追尾弾を躱すだけ――魔力が尽きるまで遊んであげましょう」
「威力は無くたって――こっちも射撃じゃ負けないぜ!」
ミーティアが本体と小型法器による同時攻撃を敢行する。
しかし放たれた精密な射撃を、ハレイは正確な直線運動で躱し続ける。
「ちっ――!」
「無駄ですよ。二人合わせても所詮は三方向からの攻撃。それに私の同時射出数には及びません」
「だったら――斬り裂くのみだぜ!」
ミーティアが法器の上に立ち――右手に紫炎の刃を宿す。左足でスロットルグリップを更に捻り、最高速度で疾走する。瞬時に星女王を斬撃の間合いに捉え――
「――もらったッ!」
薙ぎ払う。刃が――手応えなく、空を斬る。
通り過ぎ様、振り返ったミーティアの視界の隅に、間合い外に佇むハレイの不敵な笑みが掛かった。
「くっ……! 法器もないのに、なんでこんな速さで動ける!?」
距離を取り、ハレイに向き直るミーティアの元にシホが駆けよる。
「どうしよう、ミーティア。攻撃が当たらないんじゃジリ貧だよ」
「いや――高速とはいえ動きは直線的だ。それに――」
ハレイから注意を反らさず、二人は小声で話し合い――シホが頷く。
「――作戦会議は終わりましたか? 私はいつでも構いませんよ」
そんな様子を余裕の表情で見下ろしながらハレイが言う。
「待たせたな――じゃあ……再開と行こうぜ!」
ミーティアが叫び、ハレイに向かって疾走する。
「正面突破ですか? ふふ、どうぞ遠慮なく――くたばりなさい!」
ハレイの魔法陣が光を灯し――正面から誘導弾の群れを放つ。
「くっ……おおおおっ!」
殺到する魔力をミーティアは紫炎の刃を振るい、弾き、払い、落とす。
「……!」
そしてハレイの正面へと向かい――法器本体から射撃を放ち……宙へと飛ぶ。
射撃がハレイの左側を掠め――頭上を越えるミーティアの振るう刃が右側を通り抜ける。
そして――天地逆さまにハレイを見据えたミーティアが刃を収め、法器から赤い矢を放つ。放たれた赤い閃光は――ハレイを捉えることなく、その足元を通り抜けた。
「素晴らしい動きでした……しかし最後の最後で外すとは――哀れな。これがあなたの限界のようですね」
今まで微動だにせず攻撃をやり過ごしたハレイが振り向く。
「星女王さまのお褒めに預かり光栄だ。その言葉ありがたく頂戴しとくぜ! だが一つ訂正しとく。あたしは狙いを――外したことはない! ……シホ!」
「……!?」
「あなたは当たらない攻撃は絶対避けない! だからやっと――止まってくれた!」
既にシホから放たれていた光の砲弾が――
「なっ――!」
星女王の下半身を捉え――炸裂する!
轟音と共に爆発が起こり、ハレイを飲み込んでいく。
そして――
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