夜露が霧となり立ち込める。朝星の輝く空を望みながら、メテオラは息を呑む。
「ふうン……ハレイが本気を出したみたいだネ」
「クエイザ……! お前……!!」
のんびりとした口調で言いながら近づいてくるクエイザを警戒し、メテオラが黒き獣を召喚する。
「おっと……乱暴な事はよさないカ? ボクらは他の星民と違って野蛮じゃないんだしサ?」
姿勢を低くするクーヴァを眺めながら、わざとらしく降参といったふうに両腕を広げ、クエイザが苦笑した。
「多くの犠牲を払うような真似をしておきながら……どの口が言ウ……!!」
メテオラが詰め寄った。
「あのねえ……何かを得ようとするのに、何も失わないなんてことあるわけないだロ? それが誰も逆らえない宇宙の摂理サ」
いきり立つメテオラをいなすようにクエイザは首を傾げ――
「あとはどっちになるか――それだけのことじゃないカ? 誰にだって選択していける自由はいくらでもあるんだかラ」
細い尻尾を軽く曲げて見せた。
「今ならまだ間に合ウ。……ボクと手を組まないカ? メテオラ、キミを妻として迎えてもいイ。共に故郷を再興しようじゃないカ」
そう言ってメテオラの目を見つめる。
メテオラはクエイザを睨み返し――
「……断ル。譲って故郷の再興の話はともかク、お前の妃になるなド、ワタシにとってはそれこそ宇宙の終わりダ」
三行半を突きつける。
「それがキミの選択、ってわけカ。やれやれ……随分嫌われたものだナ……。だったら――賭けをしないカ?」
「賭け……だト?」
「ああ、彼女たちのどちらが勝者となるか、宇宙はどちらの未来を選ぶのか――ネ」
「相変わらず、下らない事を思いつくものネ」
クエイザの提案に、もはや呆れ気味にメテオラが返す。
「いいだろウ? どのみちボクらはこの結果を無視することはできないんだシ。ボクはハレイに賭けル。戦力差を鑑みるとオッズは不平等かもしれないけれド、いいかイ?」
「ふン。構うわけがなイ。ワタシは、シホとミーティアに――そしてステラに賭けル……!」
メテオラの答えにクエイザが満足げに笑みを浮かべる。
「よし、じゃあボクが勝ったらキミは王妃となり共に故郷を再興すル。――キミの要求ハ?」
「お前から貰いたいものなど無イ。ただワタシたちの前から消えロ――」
紅赤の爪を立て、メテオラは払うようにクエイザを指差す。
「つれないナ。……まあ、賭けは成立ダ。じゃあ宇宙の行く末を――見届けるとしようじゃないカ」
そう言うとクエイザは紺碧の爪を覗かせながら顎に手を当て、天を見上げる。
白い空で三つの星が最期の輝きを放っていた。
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