今日のココアは普通の味だった。特に感想はない。
いい加減、少し飽きてきたのかもしれない。
「――うん、友達との件はもうほとんど解決したようなものなの。それでわたし、上の人にも認められたんだよ!」
シホはいつになく機嫌が良く、自信に満ちた表情で話す。
「そうかい……だけど本当に大丈夫なのかい? あまり乱暴な事は……」
対してカナエはどこか不安げに、曇った顔でシホを見る。
「大丈夫だってば。おばあちゃんは心配し過ぎだよ。それより……レイナちゃん、元気ないね。お母さんに会えたんでしょ?」
一人ブランコに揺られるレイナを見ながら、シホが言う。
「ああ……それがねえ。あの娘、これからは仕事を辞めて家庭に専念するって言ってたんだけれど。あの後、また連絡するって言ったっきり、帰ってこないのよ。ほんとにしょうがない娘だよ……。育て方を間違えたのかねえ……」
珍しくカナエが溜息をつく。
「そう……だったんだ……。それであんなにレイナちゃん元気がなくなって……。ごめんなさい……」
願いを叶えたことが、逆に悲しい思いをさせてしまう結果になるとは……。複雑な気持ちになりシホは俯いた。
「いいえ、シホちゃんのせいじゃない。シホちゃんは頑張ってくれたもの。……でも残念だねえ。これは――レイナの手から渡して欲しかったよ」
カナエは便箋を取り出し、シホに手渡す。
……? シホが中身を確認しようとしたとき――
「――!」
どさり、とカナエがベンチから崩れ落ちた。
額に脂汗を滲ませ、胸を押さえたまま、苦しそうに地面に横たわる。
「お、おばあちゃん!! どうしたの!? しっかりして!」
手にしていた缶を放り出し、シホは膝を付いて呼びかけるが――
カナエは苦しむばかりで、呼びかけに応えない。
「カナエおばあちゃん!」
異変に気付いたレイナが叫びながら駆け寄ってきた。
「レイナちゃん! だっ……誰かっ! 救急車を!」
褐色に塗れ、側らのごみ箱が濡れていた。まるで泣いているみたいだった。
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