永遠の箒星(とわ の ほうきぼし)

― star witch’s story ―
破魔 恭行
破魔 恭行

★第八章★ 永遠の箒星(7)

公開日時: 2020年10月31日(土) 23:10
文字数:998

 時に神が起こす気まぐれ――これが奇跡と呼ばれるものなのだろうか。

「大きくなったわね――シホ」

 その魔女ひとは、強く――

 その女性ひとは、美しく――

 そのひとは、優しく――

 わたしにとって一人だけの、かけがえのない大切な――

「……お母、さん――……」

「……シホ」

 見つめ合い――

「お母さんッ――会いたかった……お母さんっ……!!」

 その懐に飛び込んだ。飛び込んで、泣いた。

「わたし、お母さんを探すために――探すために頑張って――頑、張っ、でッ……」

「こんなに……立派になって――本当に、本当に頑張ったわね――シホ」

 その腕に強く抱きしめられ――

「でも……でもッ……そのせいで……そのせいでこんなッ……ミーティアを――みんなを……ッ!」

 嬉しくて、そして哀しくて――

「そればかりか……そればかりかお母さんにまでッ……ごめんなさい……ごめんなさいッ……」

 泣き続けた。泣き続ける事しか、もう出来なかった。

 ――――。

「シホのせいじゃない――シホのせいじゃないのよ。全ては私の――お母さんのせい。あなたは何も悪くない」

 優しい吐息が耳にかかる。その声は強く優しく――そして少し、震えているようだった。

「シホ。落ち着いて……それに、大丈夫。――大丈夫よ」

「…………?」

 泣き顔のままシホは顔を上げる。

 シホのポケットから、水晶盤が――『失われし魔術書』が舞い――

「シホには――私たちには、まだ希望がある。そう――あなたが、みんなが守った奇跡の力が――」

 二人の間で――ゆっくりと回転する。

「駄目なの――その力は嘘なの――奇跡なんて、起こせないの……!」

 シホが目を絞り、首を振る。

「――奇跡は、一人で起こせるものじゃないのよ。奇跡を願う人と――その人を想い、その幸せを願う人がいてこそ出来る事なの」

 ステラがシホの左手をとり――

「そして――奇跡は自分の為に起こすものじゃない。自分が想う大切な人の為に起こすもの」

 シホが顔をあげる。そして――

「『失われし希望ロスト・グリム』は、そのとき初めて――奇跡となって舞い降りる」

 ステラの手をとった。奇跡の水晶盤が光を放ち――

 組み合わさった二つの魔法陣が展開する。

「――起こしましょう。奇跡を」

 ステラが微笑み――シホが頷く。

「……さあ、シホ。聞かせて。あなたの願いを」

「わたしの――わたしの、願いは――――」

 ――――。

 二つの魔法陣が光を放ち――世界を照らす。

 この日――宇宙そらには数多の流星ほしが注ぎ、そして光となって舞い降りた――

読み終わったら、ポイントを付けましょう!

ツイート