一帯のクーヴァが断末魔と共に崩れ、消滅する。
「やっぱりボクの思った通り――いやそれ以上だ」
数日前にグレイが法器にインストールした魔法術式の威力に、改めてシホは息を呑む。
「凄いよグレイ! こんな戦い方ができるなんて!」
「魔法自体はそれほど大したものじゃないよ。法器を自在に操れるシホのテクニックあってこそさ」
これなら一気に多数のクーヴァを撃破でき、仕事の効率もあがる。
……そして。きっとトリッキーな動きを得意とするミーティアでも完全に対応することは出来ないハズだ。
来たるべき対決で、必ず役に立つ……!! シホは確かな手応えを感じていた。
成果を見届けたシホは地上に降り立つ。つい先程まで、シホを取り囲むほどいたクーヴァはすっかり消え失せている。
クーヴァから逃れた依頼人はもうどこかに行ってしまったか。しかし――無事に願いは叶ったようだ。法器の先端に光の粒子が集い――ヘクセリウムと化す。
「あっ……」
シホがその輝石を取り落とし、地面に転がる。
半身以上を失い、消えかかっていたクーヴァがヘクセリウムへと這いずり寄るが――
――ぐしゃり
面倒そうにシホが頭を踏みつぶす。獣は黒い霧となって消えた。
…………
やや離れた空から、シホを見つめる者たちがいた。
「ヴィエラ……本当にこのままで……いいんですの?」
「確かにシホは強くなった。けどな……何か――遠くなっちまったな……」
そして、もう一人。
「これハ――面倒なことになってきたわネ……」
高圧線の走る鉄塔の上でそう一人ごち、メテオラは闇の中へと姿を消した。
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