空を駆け、空中に浮かぶ殺戮機械に斬りかかる。
神気を纏った刀を叩き付け、殺戮機械を撃破する。
そこに他の殺戮機械が機銃を放って来たので回避し、回り込み、そいつにも刀で斬り付ける。
今回の『定期便』にはマシンナリーレディは混ざっていないようだ。それなら殺戮機械だけなら楽に倒せる。
ピュアも空を駆けながら、剣で殺戮機械を切り裂いていく。
俺と同じ神霊憑依者。その力は並のマシンナリーレディに勝る。
ピュアの剣が殺戮機械のボディに叩き込まれ、打ち落とす。
ピュアの戦いぶりも大分サマになってきた。うかうかしていると追い抜かれるな、と思いつつ俺も目の前の敵を刀で切り裂く。
テレーシアはエネルギー・キャノン、ガトリング・ガン、ミサイルランチャーの一斉射撃でまとめて殺戮機械どもを叩き落とす。
テレーシアの火力は強化改造を受ける前と比べて格段に上がっている。
もはや雑魚の飛行型殺戮機械など敵ではない。
そして、それはラリサも同じ事。
四門のエネルギー・キャノンを展開し斉射。
その火力はテレーシア同様、強化改造前と比べて段違いに上がっている。
四筋のレーザー光に体を貫かれた殺戮機械たちが墜落していく。
それを潜り抜けラリサに接近して機銃を放つ殺戮機械もいたが、それらはラリサのサブウェポン・膝部マイクロ・ミサイルポッドから放たれた小型ミサイルの直撃を受けて撃墜されていく。
俺も刀を振るい、残りの殺戮機械を斬り捨てていく。
そうして戦いが終わり、一旦俺たちは拠点に戻る前に廃墟となった市街の道路に降り立つ。
「みんなお疲れ様」
俺が三人に声をかける。三人共笑みを浮かべて頷いた。
「光輝さんもお疲れ様ですっ!」
ピュアが天真爛漫に俺に労いの言葉をかけてくる。
この程度の雑魚機械相手に疲れているようではマシンナリーレディと戦う事など出来ないので儀礼的なお互い言葉であったが。
「流石にもう『定期便』に苦戦はしませんね」
「油断は禁物。『定期便』に大型やマシンナリーレディが混ざっている事もある」
らしからぬ強気な台詞を言ったテレーシアにラリサが釘を刺す。
確かに。大型の殺戮機械やマシンナリーレディも混ざっている事は有り得る。
それらと当たった時には全力を出して敵を倒さなければならない。
「しかし……俺とピュアの力だが……」
俺は少し前から気になっていた事を述べる事にした。
「どうかしたんですか?」
「光輝とピュアが?」
テレーシアとラリサが食い付いてこちらを見る。
ピュアは心当たりがないのかきょとんと首を傾げている。
「……いや、もっと先がある気がしてな。神霊憑依者の力はまだまだこんなもんじゃないはずだ」
「先、と言いますと具体的にどんな?」
「それはまだ分からないんだけど……」
テレーシアに問われて分からないと答えるとラリサが呆れた声を出した。
「分からないものを追い求めてどうするの」
「今は分からないだけだ。それに具体的には分からないけど、神霊憑依者の力にまだ先があるのは事実だと思う。なぁ、ピュア」
「えっ!?」
急に水を向けられ、ピュアが驚きの声を上げる。
俺含む三人の視線がピュアに集まり、ピュアは気圧されたようになりながら口を開く。
「そうですね。光輝さんの言う通り、まだまだ全力は出せていないって気はわたしもします」
「テレーシアとラリサがパワーアップしたように俺たちにもパワーアップが必要だと思うんだ。パワーアップして来た敵、マシンナリーレディに対抗するためにも」
そうだ。マシンナリーレディがパワーアップするのは何も味方だけではない事に以前の戦いでは気付かされた。
それに対抗するためにはこちらも力を付ける必要がある。
「光輝とピュア。毎日鍛錬している。あれじゃダメ?」
「ダメって事はないんだが……確かに毎日の鍛錬でも実力は向上していると思う。けど、もっと根本的な所で強くなれないかと……」
「あはは……なんだかヒーローに憧れる子供みたいですね」
苦笑いしながらテレーシアが感想を言う。
ヒーローに憧れる子供、か。そうかもしれない。
しかし、今の人類の状況では神霊憑依者はまさにヒーロー、希望の星なのだ。
それに相応しい力を身に付ける必要がある。
少なくともパワーアップした敵、マシンナリーレディに後れを取るような事はあってはならない。
「実戦経験を重ねれば見えてくるものもあるかと思っていたんだが……上手くいかないものだな」
「まぁ、人間。そんなにいきなり劇的には変われない。神霊憑依者であってもそう」
「だけど、マシンナリーレディは劇的に変われるだろう?」
ラリサの言葉に俺は問い返す。
「俺たちはそんなパワーアップを重ねて来る奴らと戦わないといけないんだ。いつまでも今のままではいられない」
俺の言葉を本気と受け取ったか今度は茶化して来る奴はいなかった。ピュアも真剣な顔で考え込んでいる。
「そのためにも今は鍛錬あるのみですよ、光輝さん! そうすれば見えて来るものもあるかもしれません!」
「そうだな」
ピュアの言葉に俺は頷くと、それを合図として四人で拠点に帰る。
殺戮機械との戦闘で疲れは感じていたが、今日も鍛錬を積む事にする。
こういう細かな積み重ねが大きな力となる。
その理論を否定はしないが、もっと根本的な所で何かが違うような気がするのだ。
「ピュア、戦闘を終えたばかりで疲れている所、悪いんだが、今日は限界まで神霊憑依者の力を引き出してみないか?」
「先ほど、言っていた事ですね。わたしは大丈夫です。やってみましょう!」
ピュアから色よい返事を貰えたので、俺とピュアは剣を構えて精神を集中させる。
体に宿りし、神気を限界まで引き出して、何かを見つけられないかと試みる。
俺とピュアの体から神気が噴き出る。それは嵐となって周囲の物を吹き飛ばす。森の木々がガサガサと揺れる。
全身から神気が噴き出ているのを感じる。
この状態ならパワーアップしたマシンナリーレディにも後れは取らないと思うが……。
「ぐっ……!」
「はあっ!」
俺とピュアは同時に膝から崩れ落ちた。
ダメだ。体内の神気を全部外に出すだけだと消耗が大きすぎる。
とても戦えたものではない。これなら今まで通り、普通に戦っていた方がマシだ。
「ダメですね……」
「そうだな……」
分かってはいたが、何もかもが未知の神霊憑依者のその先の力を見つけ出すというのは難しい。
「模擬戦、やるか」
「はい。……ですが、少し休んでから……」
「ああ。俺も少し疲れた……」
先ほどの雑魚の殺戮機械相手の戦闘以上の疲労を感じている。
無理やり力を引きずり出そうとした結果がこれだ。
何事も無理はよくないと言う事なのだろうが、無理してでも見つけ出さなければならない。
パワーアップしたマシンナリーレディが襲って来るのは明日かもしれないのだ。余裕はこちらにはない。
それからしばらく俺とピュアは休憩を取り、それなりに体力が回復した所でいつものように二人して模擬戦をやる。
ピュアが仲間に加わってこうして鍛錬する相手が出来たのはいい事だが、これを続けていても劇的な変化に辿り着けるとはなかなか思えない所があった。
神霊憑依者の真の力を引き出す劇的な何か。それが何なのか。分かれば苦労はしないのだが。
ピュアの剣と刀を打ち合わせる。
ピュアも大分上達してきたが、流石にまだまだ俺が一本取られる訳にはいかない。
俺は刀を振るい、ピュアの剣を弾き飛ばす。
異星の基地から強奪してきたという恐らく地球上にはない金属で作られた剣はコロコロと地面を転がる。
「参りました~。やっぱり光輝さん、強いですね」
「いや……俺もまだまださ」
そうだ。もっと力がいる。みんなを守るための力が。それを熱望する俺であった。
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