「わわわ……光輝さんとラリサさんが戦うんですね……!」
興奮した様子のピュアの声が響き、俺とラリサは距離を取って向かい合う。
俺は刀を構え、ラリサはレーザー・ナイフの二刀流だ。
さて、パワーアップしたというラリサの力、見せてもらおうではないか。
「はっ!」
全身に宿った神気を解放する。
神霊憑依者の特権だ。これで身体能力に優れるマシンナリーレディとも互角以上の戦いが出来る。
ラリサはレーザー・ナイフを二本、構えるとそのまま背中のスラスターを噴かせて突っ込んで来る。
速い。これがパワーアップしたラリサの機動力か。これまでとは段違いだ。
のろのろしていればすぐにやられると悟った俺は刀を振るう。
正直、今のラリサのスピードは捉え切れていないのだが、牽制も含めて刀を振るう。
ラリサはそれを回避し、回り込んで来る。その手に握られたレーザー・ナイフが煌めく。
まずい。咄嗟に神気を放ち、方向転換し、ラリサと向き合う。
ラリサが繰り出した斬撃を刀で受け止め、弾き返す。レーザー・ナイフは小回りが利く武器だが、破壊力という面では弱い。
神気を纏った刀で押し返すが、ラリサは背中からスラスターを噴き、体勢を整える。
「パワーアップは伊達じゃないって事か」
「そういう事だね」
お互いに笑みを交換し合う。
繰り出されるナイフでの神速の突きを刀の刀身で受け止め、弾き返す。
こっちも神霊憑依者とはいえ、容赦ないな。
相手もマシンナリーレディだから多少のダメージは大丈夫だろうから、こちらもあまり容赦はしないが。
「はあっ!」
連続突きを弾き返し、刀を振るう。
袈裟懸けに振るわれた刀を前面のスラスターを噴いて体を急速後退させてラリサは回避する。
そのままスラスター類を噴かせて俺の刺客に回り込もうとする。
俺はその動きを見逃さないようにしつつ、体を回し、ラリサを正面に捉える。
それにしても速い。これがスラスター類の強化の成果か。
テレーシアみたいに武装が直接強化された訳ではないが、充分な強化だ。
この速度なら敵、マシンナリーレディと戦う時にも優位に立てるだろう。
繰り出されるレーザー・ナイフの斬撃を刀で受け止める。
相手がナイフなら、と侮ってはいられない。こちらも本気で刀を振るい、攻撃を仕掛ける。
ナイフを弾き、刀で斬りかかる。
スラスター類を噴かせて、これを回避するラリサ。
やがてお互いに刀とナイフを首筋に突き付け合った所で勝負は終了した。
「引き分け、か」
「そうだね」
一応は引き分け。
とはいえ、マシンナリーレディの真骨頂である銃火器を相手が使っていない事を考慮すると俺の負けかもしれない。
「随分、速くなった。それが強化改造の成果か」
「僕の今のスピードに付いてこれる光輝も光輝で相当なものだとは思うよ」
「ギリギリだ」
そうギリギリだった。なんとか付いて行く事が出来たが、そのスピードには舌を巻く。
「お二人共凄いです! わたしなんかじゃとても及びません!」
観戦していたピュアが感激の声を上げて、俺もラリサも思わず笑みがこぼれる。
「何。ピュアもすぐにこの域に達する」
「ピュアには頑張ってもらわないと困るからね。僕たちと同等の戦闘力を身に付けてもらう」
「が、頑張ります……!」
俺とラリサで脅しめいた期待の言葉をかけるとピュアが慌てた様子で握り拳を作る。
その日はそれで鍛錬もお開きになったが、数日後、『定期便』がまたやって来たので俺たちは出撃する。
「さて、ラリサの強化された火力を見せてもらうか」
俺はラリサにそう声をかける。
「僕も楽しみだよ。ぶっ放すのは初めてだからね」
自信と期待を見せるラリサ。そんな様子をテレーシアとピュアは笑みを浮かべて見守る。
空を飛んでいると飛行型の雑魚殺戮機械の群れが見えて来た。
ラリサが四門のエネルギー・キャノンを展開する。
一見すると変わっていないように見えるがその銃身はこれまでとは違う。
「じゃあ……行くよ」
ラリサの四門のエネルギー・キャノンからレーザー光が放たれる。
その速度はこれまで以上だ。その斉射に殺戮機械たちは纏めて撃ち落とされる。
大した威力だ。ラリサの強化改造は機動性の強化だけに留まっていない事が分かる。
「うん。いい調子」
ラリサ自身もそう言い、それに活気づいた俺たちは殺戮機械に攻撃を仕掛ける。
「ラリサに負けていられません!」
強化改造で火力面を大幅強化されたテレーシアが右肩のエネルギー・キャノン、左肩のガトリング・ガン、両腰のミサイルランチャーを同時に斉射し、殺戮機械どもを叩き落としていく。
こちらは火力の向上が目覚ましい。接近戦用の武装であるレーザー・ランスも同時に追加装備されているのでそれを展開し、スラスターを噴き、殺戮機械に接近。レーザー刃で貫き撃墜していく。
「接近戦をやられたら俺たちのお株がないな」
俺はそう言いながら空を駆け、殺戮機械に接近。
殺戮機械は機銃を放ち迎撃するもそれを神気の守りで強引に突破し、刀を殺戮機械に突き立てる。
これで殺戮機械の一機を撃墜する。ピュアも殺戮機械に接近し、剣で斬り付けて落とす。
この調子で『定期便』は撃退出来る。そう思った時だった。
「レーダーに反応です! 数は2! おそらくマシンナリーレディです!」
テレーシアが声を上げる。
マシンナリーレディの増援!? これは油断出来ない。
俺たちは殺戮機械を落としながら、待ち構えているとそこにエイミーとクレサンスの二人のマシンナリーレディが現れた。
「あいつらは……!」
思わず目を惹かれ、警戒する。
エイミーは二門だったガトリング・ガンが四門に増設され、右腕に斧のような物を装備している。
クレサンスは両腕のガトリング・ガンはそのままに背中のエネルギー・キャノンが一門から三門に増設されている。
敵、マシンナリーレディも強化されるかもしれない。そのラリサの読みが当たった形だった。
「地球人ども! 新しく生まれ変わった私たちの力を見せてあげるわ!」
「覚悟はいいか!」
自信たっぷりに言って来る二人のマシンナリーレディ。それにテレーシアとラリサは強気で返した。
「パワーアップしたのはそちらだけじゃありません!」
「こっちもパワーアップしている。負けはしない」
そう言い、空中で相対する。
初手は敵に譲った。エイミーが四門のガトリング・ガンと背部マイクロ・ミサイルポッドから、クレサンスが両腕のガトリング・ガンに背中の三連エネルギー・キャノンをそれぞれ斉射する。
これまでとは段違いに威力が上がっている。その弾幕に思わず近付けず、俺とピュアは下がる。
テレーシアとラリサがそれぞれ射撃武器を展開し、これに撃ち返す。
火力が上がっているのは相手だけではない。こちらもだ。
激しい砲火が飛び交い、廃墟の空を光で照らし上げる。
俺とピュアは接近して剣で攻撃しようとするもなかなか近付けない。
敵、マシンナリーレディの火力の向上が激しく、その弾幕を掻い潜る事が難しかったからだ。
とはいえ、俺やピュアには接近戦しかない。なんとか近寄ろうと空を駆ける。
「甘粕光輝! いつまでも好き勝手にはやらせないよ!」
エイミーが俺をターゲットにし、四門のガトリング・ガンを放って来る。
これまでの二倍の弾丸が殺到し、俺はなんとかそれらを切り払い、あるいは神気で防御して耐えるが、近付ける状態ではない。
ピュアもなかなか近付けないでいる様子だった。クレサンスの背中の三門のエネルギー・キャノンも厄介だ。
こちらもテレーシアがエネルギー・キャノン、ガトリング・ガン、ミサイルランチャーを斉射し、ラリサが四門のエネルギー・キャノンを放ち攻撃しているが、距離を取っての撃ち合いでは決定打にはならない。
やはり近付いて、斬り付けなければ。
俺はその機会を伺うのであった。
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