「す、凄い……!」
思わず敵と相対している事も忘れてグレンの絶技に見入る。
知り得る限りで最大級の威力を誇るシビーユの大型エネルギー・キャノンの砲撃を剣一本で防いでしまった。
これは間違いなく神霊覚醒者の力。敵味方共に呆然としていたが、敵、マシンナリーレディたちが先に我に返り、グレンを危険視する。
「あの男……!」
「仕留めますわよ!」
美夏が大型ミサイルランチャーからミサイルを放ち、ミロスラーヴァは両腕のマイクロ・ミサイルランチャーからミサイルを放つ。
エイミーは四連装ガトリング・ガンと背部マイクロ・ミサイルポッドから一斉射撃をし、シビーユも肩のレール・キャノンと右手に持った銃剣で砲撃を放つ。
それらがグレン一人に狙いを集束し放たれ、一斉にグレンに襲い掛かる。
「グレン!」
思わず俺は叫ぶ。
テレーシアやラリサ、ペルニルも助けに参じようとしたのだが、間に合わない。しかし。
「ふっ!」
グレンは全身から神気を放ち防壁とすると一斉砲撃にも耐えて見せた。
なんて力だ。そのままグレンは敵、マシンナリーレディたちに一気に接近して剣を振るう。
迎撃に放たれる砲火を突き抜けて、シビーユに迫る。
グレンの剣とシビーユの銃剣がぶつかり合い、シビーユの銃剣が砕け散る。
「くっ!」
慌ててシビーユはレール・キャノンを放つもそれが効くグレンではない。
シビーユに追撃の剣を振るおうとする。
そこに横からエイミーが右腕の機械腕と左手で持ったレーザー・ブレードで斬りかかる。
グレンはこれを剣で軽々、捌き、一合の激突でエイミーのレーザー・ブレードを破壊する。
次いで機械腕の爪とも剣でぶつかり合ったが、それだけでエイミーの右腕の機械腕は砕け散る。
「馬鹿な!」
エイミーは叫びつつ、背部マイクロ・ミサイルポッドから小型ミサイルを放ってグレンを攻撃するもこれらが命中してもグレンが纏っている神気の壁を突破する事はない。
グレンの有り得ない戦闘能力であった。
「って俺たちも呆然としている暇はない!」
ハッと我に返り、俺は刀を構えて、ピュアに目配せし、二人で前線に出る。
テレーシア、ラリサ、ペルニルも援護射撃を開始する。
グレンにはそんなものは必要ないかもしれないが。
砲火を浴びせられてシビーユ、美夏、ミロスラーヴァ、エイミーは後方に下がりつつ反撃の砲火を放ち応戦する。
そこにグレンを筆頭に俺たち神霊憑依者が斬りかかる。
俺はエイミーに狙いを定めた。彼女の右腕は砕け散っており、左腕のレーザー・ブレードも破壊されている。
狙うは、今だ。
「くっ、甘粕光輝!」
エイミーがガトリング・ガンとミサイルポッドをこちらに放ち迎撃するが、それらを刀と神気で防ぎ、一気にエイミーに接近する。
刀を振るい、自慢の四連装ガトリング・ガンをも破壊する。
これでほぼエイミーの戦闘力はなくなった。
その間に、グレンは美夏と戦い、美夏が振るうレーザー・ブレードを自身の剣で破壊し、美夏に斬り付ける。
美夏はダメージを負う。
「こんな馬鹿な事が……撤退しますわよ!」
シビーユがそう言い、撤退を指示する。
賢明だろう。
今の彼女らでグレンに勝てるとは思えない。
マシンナリーレディ四人は少なからず損傷を負いながらも空高くへと飛び去って行く。
それを見送って、俺たちはグレンの周りに集まった。
「凄いもんだな……グレン」
「このくらい『覚醒』すれば当然だ。お前も覚醒した時はこれくらいの力は出せていたのではないか?」
「それは……」
「ええ。覚醒した光輝は今の貴方くらいの強さを発揮していたね」
グレンの問い掛けに俺に代わりラリサが答える。
確かに。俺も覚醒すれば今のグレンくらいのとんでもない力を出せていた。
グレンは自由にその覚醒が出来るのか。
それは強いだろう。並のマシンナリーレディなど相手にもならない。
「お前たち二人にも自由にこの状態になれるようになってもらわないといけない。そうしないと流石に異星の拠点は落とせない」
「グレン一人じゃダメなの? 充分に思えるけど」
ペルニルの言葉にグレンは首を横に振った。
「ダメだ。覚醒した神霊憑依者が一人では異星の拠点を潰す事は難しい。最低でも二人は欲しい所だ。無論、その上でマシンナリーレディの援護もあってこそ、だが」
「二人、か……」
ならば俺かピュア。
どちらかは覚醒の域に至らないといけない事になるな。
しかし、俺が覚醒の力を発揮したのはどちらとも火事場の馬鹿力的なものだ。
意識して発動した訳ではない。それが自由自在に発動出来るようになるなど可能なのだろうか。
「ともあれ、これで俺の事は信じて貰えたかな?」
グレンが笑みを浮かべる。俺たちは頷いた。
「とりあえず敵ではなさそうね」
「信じます」
ラリサとテレーシアが言う。
「私もまだ信じて貰っている立場じゃないんだけど、あんたの事は信じるわ」
「わたしも信じます! グレンさんの事!」
ペルニルとピュアもそう言い、信頼を示す。俺も、
「ああ。信じるよ、グレン。俺たちの星を救うために力を貸してくれ」
「そいつは任された。アゴルモンアの連中の好きにはさせられないからな。この星からも奴らを追い出してやる」
この地球から異星の軍勢を追い出す。
それは全地球人の夢であり、願いであった。それが可能だと言うのか。
このグレンという青年がそれを可能にしてくれると言うのか。
少し都合が良すぎる気もしたが、星の外から来るのは何も敵ばかりではないと言う事だろう。
グレンと共に異星の拠点を潰し、ブレインを倒す。
そうして、この星から異星の軍勢を撤退させる。
それは夢物語ではない。掴み取れる希望なのだ。
グレンと共にレジスタンスの拠点に帰る。リーダーとブラッドを始めとするまとめ役のメンバーにグレンの事を紹介する。
当然、訝しむ目で見られたが、
「神霊憑依者か。お前さんが言うには大気圏上にある異星の拠点を潰しブレインを倒せば異星の侵略は止むんだな?」
「ああ。アゴルモンアのやり方からしてそれは間違いない」
「それが事実なら大した事だ。この星を救えるかもしれない」
そう言いつつブラッドはどこか疑っている様子だった。
あまりに虫のいい話に疑ってかかるのは無理もないが俺はこの話を信じていいような気がした。
とりあえずはグレンを受け入れる事にしたレジスタンスのメンバーたちを背に俺とピュアはグレンに森の方へと連れ出されていた。
「さあ、それじゃあ、二人には覚醒の域まで至ってもらうぜ。そうしないと異星の拠点は攻略出来ないからな」
「それは分かるんだけど、具体的にどういう鍛錬を積めばいいんだ?」
恥ずかしながら、全く分からない。
自分たちで出来るレベルの鍛錬は積んで来たつもりなのだが、あの覚醒の域には遠く及ばない。
「俺にも分からん」
グレンにそう言われて俺とピュアはずっこけそうになる。
「わ、分からん……って」
ピュアが困惑の声を漏らす。それも当然。俺も困惑の言葉を投げかけたかった。
「だが、実践あるのみだろう。俺が覚醒するから二人がかりでかかってこい! そうすれば何か掴めるかもしれない」
「まぁ、実践あるのみってのには同意するけど……」
こんなんでホントに大丈夫かな。俺はそう思う。
「そんじゃ、行くぞ!」
グレンが剣を構え、覚醒する。
全身から溢れんばかりの神気が放出され、それに圧倒されそうになる。
俺とピュアも剣を構え、出来る限りの神気を出すが、グレンには遠く及ばない。
この状態で戦っても手も足も出ないような気がするのだが、実践あるのみだ。自分で言った事だ。
俺はピュアの方を見て、ピュアも頷き、二人がかりでグレンに斬りかかる。
それをグレンは凄まじいパワーを秘めた剣で受け止め、弾き返すのであった。
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