レジスタンスの拠点。
その会議室に俺たちは集まっていた。議題はこれからの異星の軍勢との戦いについてだ。
これまで地球人類のレジスタンスは異星から襲撃に対し、迎撃に出るだけでこちらから積極的に打って出る事をしなかった。
それが精一杯だったからというのが一番だが、やられっぱなしでいるだけではジリ貧になるだけだ。
なんとかこちらから異星の拠点にも一打撃与えられないかと言う話になるが、それはやはり難しい。
「異星の拠点って言っても地球の外でしょう? 俺たち地球人は『審判の日』以前にも宇宙への進出を完全に果たしていたとは言い難い。やっぱり難しいんじゃないでしょうか?」
俺が現実的な意見を言う。
異星の拠点と言うからにはやはり地球外にあると見て間違いないだろう。
そこに攻め込んで攻略するというのは現状では無理があり過ぎる気がする。
勿論、守りに回っているだけではいずれやられるという意見を否定はしないが。
「確かにそうだが、マシンナリーレディなら宇宙空間でも活動出来るんじゃないのか? 敵、マシンナリーレディは宇宙から来ているんだろう?」
ブラッドがテレーシアとラリサを見て言う。
その通り。マシンナリーレディならおそらく宇宙空間でも活動出来るだろう。しかし。
「それでもテレーシアとラリサの二人だけじゃ無理です。相手に何人、マシンナリーレディがいるかどうかも分からないのに」
「ふむ。甘粕くん。君やピュアくんは宇宙では活動出来ないのかね?」
リーダーが俺に問い掛けて来る。
「それは、分かりません……。試した事もありませんし……」
マシンナリーレディに匹敵するあるいは凌駕する力を持つ神霊憑依者であればあるいはマシンナリーレディ同様に宇宙空間での活動も可能かもしれない。
そう思う気持ちは分かる。それでも不確定だ。宇宙に出たら死んでしまった、では話にならない。
「確かに不確定なまま甘粕やピュアを宇宙に出して死んぢまったってのは避けたい所だが……」
ブラッドが頷く。貴重な戦力をドブに捨てるような真似は軍団のリーダー格としては取りがたい選択肢であろう。
「このまま守りに徹しているだけだとジリ貧なのは確かだ」
それも一理ある。
根本的に地球から異星の軍勢を追い出すにはこちらから攻撃を仕掛けるしかないだろう。
しかし、それをやるにはあまりに条件が整っていない。
テレーシアとラリサの他にも各地に地球人類の味方として残ったマシンナリーレディはいるだろう。
それらを総動員して、地球外に攻撃……いや、ダメだ。地球外のどこに異星の拠点があるのかも分かっていないのだ。
結局、地球と異星では根本的な科学力の差が壁として立ち塞がる。
そんな無謀な攻撃に地球に残った数少ないマシンナリーレディを動員するなんて出来ない。
「僕たちは確かに宇宙空間でも活動出来るだろうけど……」
「敵の拠点も分かっていない状況でそれをするのはちょっと無謀ですよね……」
ラリサとテレーシアも苦言を呈する。ブラッドはふむ、と考え込む姿勢に入る。リーダーもだ。
結局、今の俺たちに出来る事は異星の軍勢が地上に拠点を築こうとしたらそれを防ぎ叩き潰す事とレジスタンスの拠点を守る事しか出来ないと言う事か。
神霊憑依者がなんて情けない、とも思うが、無謀な攻めを行い破滅を招く真似も出来ない。
とりあえず今すべき事はマシンナリーレディの反逆で分断された各地のレジスタンスとのネットワークを回復する事だろう。
それをしなければ異星の拠点に攻撃なんて夢物語だ。
地球各地に異星に付かず、残っているマシンナリーレディはいる。
彼女らと連携を取る事を考えればあるいは異星の拠点への攻撃も可能となるかもしれないが。
「わたしや光輝さんは宇宙空間でも活動出来るんでしょうか?」
「分からないな、それは。異星の側に付いたマシンナリーレディが宇宙でも活動しているのを見て、マシンナリーレディなら宇宙でも生きていけるとは分かったが」
ピュアの質問に現実的な見解から俺は答えを返す。
マシンナリーレディは宇宙で活動出来ても神霊憑依者がそうかは分からない。
何分、マシンナリーレディと違い機械と融合している訳でもないのだ。出来ない可能性の方が高そうに思えた。
「しかし、やはりこのままではジリ貧だ」
「だからといって無謀な攻撃に出る事もないでしょう、ブラッドさん。今は自分たちの拠点を守るので精一杯。それは仕方がない事だと思いますけど……」
「それもそうなんだが……」
結局、あの『審判の日』からこちらから異星への効果的な反撃は何も出来ていないというのが実情だ。
勿論、異星の軍勢がこの地上に侵略のための基地を作ろうなどとした時はそれを妨害し、破壊しているが、地球の中でなければ対処できないという現実はある。
なんとかこちらからも一撃加えたいというのが本音の所だろう。
多少、無茶でもそれをやってのけないと地上を異星の手から地球人類の手に取り戻すなんて事は出来ないのかもしれない。そう思う気持ちは分かるが。
「結局、今は守りに徹するしかないのか……」
リーダーがため息を吐く。
断腸の思いだろうが、それしかないだろう。
今のこちらの戦力で異星の軍勢の拠点に強襲をかけるなど無茶にも程がある。
こちらとしてもなんとか出来ないものかと考えるが、無理だ。
かつては地球人類のために戦っていたマシンナリーレディたちを情けを殺して、撃破してはいるが、マシンナリーレディも異星から見れば尖兵に過ぎないだろう。
それを撃破する事で戦力を削ぐ事は出来ているので決して無意味とまでは言わないが、根本的な解決には程遠い。
「確かに俺やピュアなら宇宙空間にも行けるかもしれませんけど……」
「いや、気休めはいい、甘粕。俺もお前たちにそこまで高望みはしていない」
重くなった雰囲気を払おうと俺は口に出すが、ブラッドに封じられる。
根拠のない気休めだ。それが分かっていたので俺もそれ以上は言わずに口を紡ぐ。
結局、会議が襲って来た異星の軍勢を倒すというこれまで通りの方針を再確認しただけで終わり、解散となる。
俺はピュアとテレーシア、ラリサと共にプレハブ小屋を出た。
「僕たちならやってもいいけど、異星の拠点強襲」
「その異星の拠点が地球外のどこにあるのかも分からないんじゃな……」
ラリサはこう言ってくれるがやはり無謀に過ぎると言うものだ。俺はため息を吐く。
結局、地球はあの『審判の日』以来、異星の奴らにされるがままになっているという事だ。
悔しいが、それが事実だ。
やって来る異星の兵器を迎え撃つだけでこちらから効果的な攻撃を加える事は出来ないでいる。
「ともあれ、ピュア!」
「は、はいっ! 何でしょうか!?」
俺はピュアの方を向き直る。
「お前はテレーシアとラリサとの模擬戦で未熟さを露見してしまった。ビシバシ鍛えるからそのつもりでいてくれ」
「わ、分かりましたっ! なんとか、付いて行きます!」
とりあえず目下の課題はピュアの鍛錬だろう。
銃火器も使っていないマシンナリーレディにも負けてしまうようではここから先の戦いに不安が残る。
剣のみで戦う以上、接近戦でマシンナリーレディに負けるとは何事か。
「スパルタ教育だね」
「ピュアちゃん、頑張って!」
ラリサとテレーシアから激励(?)の言葉が飛び、ピュアは剣の柄を握り締める。
俺も刀を抜き放ち、その柄を握る。
とりあえずピュアには徹底して経験を叩き込む事が重要だ。それでこそ戦いの腕も上がるというものだ。
今日は徹底的にやるか。そう思い、俺はピュアと剣を打ち合わせるのだった。
よろしければポイント評価・ブックマーク登録をしてくださると嬉しいです!
読み終わったら、ポイントを付けましょう!