【完結】反逆のマシンナリーレディ

地球文明崩壊。救世主と思われた存在は地球人類に牙を剥いた
和美 一
和美 一

第32話:激戦の末に

公開日時: 2021年6月22日(火) 18:06
文字数:3,152


「仲間の仇を討たせてもらうわ!」


 クレサンスはそう言い、背中の三門のエネルギー・キャノンを斉射する。


 三筋の閃光がこちらに迫り来るがそれを回避する。


 仲間の仇、か。

 俺たちは異星の側に付いたマシンナリーレディを既に何人も殺している。


 恨まれるには充分だろうが、だからといってやられてやる訳にもいかない。


 俺は刀の柄を握り締め、なんとか接近する隙を伺おうとする。

 そうしている所にエイミーの背部マイクロ・ミサイルポッドからの小型ミサイルが飛来し、刀を振るい、それらを切り払うか、あるいは神気でガードする。


「くそ、俺たちもテレーシアやラリサみたいに強化が欲しいぜ……!」


 俺やピュアはマシンナリーレディではないのだからそれは不可能な事なのだが、思わず毒づきながら、接近の機会を伺うと、ラリサが四門のエネルギー・キャノンを放つ。


 元々高かった威力が強化改造でさらに増している。

 レーザーの光に照らされながら、この援護を受けて、俺はクレサンスに接近する。


 刀で斬り付けようとした時、クレサンスの右腕のガトリング・ガンが引っ込んだかと思うと、代わりにレーザー・アックスが展開される。


 こいつ、接近戦用の装備を!


 ラリサが予測した通りだった。

 異星の連中はマシンナリーレディに接近戦用の装備を追加していたのだ。


 刀とレーザー・アックスがぶつかり合い、ギリギリと凌ぎ合う。


「そう簡単にやれると思わない事ね!」

「接近戦の経験ならこっちが上だ!」


 強気な言葉を発するクレサンスに俺は刀を引き戻し、再度の斬撃を放つ。


 レーザー・アックスでそれを受け止めながら、左腕のガトリング・ガンをほぼゼロ距離で放って来る。


 まずい。この距離で受けるのは流石にやばい。


 俺は神気を全開にして体中から放出し、クレサンスを後方に吹き飛ばす。


 そこに刀で斬りかかるが、レーザー・アックスで受け止められる。


 そこにエイミーが四門に増設されたガトリング・ガンを放とうとしたようだが、すかさずテレーシアがミサイルランチャーを放ち、エイミーはガトリング・ガンをそちらの迎撃に当て、ミサイルを撃ち落していく。


 その隙にピュアがエイミーに接近し剣で斬りかかるが、エイミーもレーザー・ブレードを展開するとピュアの剣を受け止める。


 エイミーにまで接近戦用の装備が……!


 驚愕はしないが、厄介だとは思う。

 銃火器を掻い潜り、接近戦に持ち込んでも圧倒的な有利は取れなくなったという事なのだから。


「仲間の犠牲は無駄にしないわ!」


 正義の味方のような事をエイミーは言い、レーザー・ブレードを振るい、ピュアと斬り合う。

 ピュアも神気を込めた剣を振るってそれに対抗する。


「ピュアちゃん! 下がって!」


 テレーシアの声。

 テレーシアがエネルギー・キャノンとガトリング・ガンを同時に放ち、エイミーを狙う。


 ピュアは一旦、引き下がり、飛来するレーザーと銃弾をエイミーはなんとか回避しようとするが、レーザーは回避出来たが、ガトリング・ガンの銃弾が体に命中する。


「ぐっ!」

「今です!」


 そこにピュアが再び斬りかかり、エイミーは右手のレーザー・ブレードでなんとかそれを受け止める。


 その間も俺とクレサンスの斬り合いは続いていた。


 俺の刀をクレサンスはレーザー・アックスで受け止める。


 それでも接近戦の経験はこっちが上、次第に圧倒し出すが、そうなるとクレサンスは左腕のガトリング・ガンを向け、こちらを牽制。


 俺が思わず下がった所に背部の三門のエネルギー・キャノンで狙い撃とうとする。


 そこに小型ミサイルが飛来。ラリサの膝部マイクロ・ミサイルポッドから放たれた小型ミサイルだ。


「こっちの方が、数では有利」


 ラリサは続いて、四門のエネルギー・キャノンでクレサンスを狙い撃つ。


 四筋のレーザーをクレサンスはなんとか回避するが、そこに俺が刀で斬りかかる。


「こちらのパワーアップは伊達ではないわ!」


 クレサンスは尚も強気に言い放ち、レーザー・アックスを振るい、俺の刀を受け止める。


 一合、二合と刃同士がぶつかり合い、俺はその勢いのままクレサンスの背後に回り込む。


「なっ!?」

「言ったろ、接近戦の経験はこっちが上だ!」


 そうして背部の三門のエネルギー・キャノンを刀で斬り付ける。これでもう撃てないはずだ。


「よくも!」


 素早く振り向いたクレサンスが左腕のガトリング・ガンを撃って来るが、迫り来る銃弾を刀で切り払うか、神気で防御するかして俺は一時後退する。


 その間、テレーシアの援護を受けながらピュアはエイミーと戦っていた。


 そこに助太刀に駆け付ける。追いすがるクレサンスにはラリサがエネルギー・キャノンを放ち、牽制。

 さらに接近しながら小型ミサイルを放つ。


「強化された事で慢心したな、エイミー! お前の悪い癖だ!」

「仲間面するな! 地球人が!」


 エイミーのガトリング・ガンが唸り、こちらに弾丸の雨を降らせるがそれらを凌ぎ、ピュアと共に斬り込む。


 二人がかりで接近戦を挑まれては一本のレーザー・ブレードだけで対処するのは不可能だ。


 次第にエイミーは押されていく。

 ピュアの剣がエイミーのレーザー・ブレードをへし折る。そこに俺は袈裟懸けに斬り付けようとしたが、


「助けて、お兄ちゃん……!」

「っ!」


 思わず剣が止まる。その隙にエイミーは後退しガトリング・ガンをこちらに放った。


「あはは! 引っ掛かったわね! 甘いのよ、お前は! 甘粕光輝!」


 そこにラリサの追撃を振り切ったクレサンスも合流する。


「エイミー、ここは撤退よ」

「多勢に無勢ね。でも、次はお前たち地球人を皆殺しにしてやるから!」


 そう言い、二人のマシンナリーレディはスラスターを噴かせ、去って行く。


 呆然と俺はそれを見送り、テレーシアとラリサと合流する。


「すまない。俺が甘いばっかりに敵、マシンナリーレディを仕留めるチャンスを逃してしまった」


 その場で俺は詫びる。だが、他三人は俺を責める気はないようであった。


「あの小柄なマシンナリーレディは光輝さんの昔の仲間だったんでしょう? 仕方がないです」

「卑怯な手を使った相手を責めるべき」


 テレーシアとラリサはそう言って俺を励ましてくれる。


「光輝さんは悪くないです!」


 ピュアもそう言ってくれる。

 それでもこれは俺のミスだ。


 パワーアップした敵、マシンナリーレディを仕留めるチャンスがあったのにそれをふいにしてしまったというのは痛恨事である。


「まぁ、僕も自分のパワーアップは実感出来た。全く収穫がなかった訳じゃない」


 そんな俺を励ますようにラリサがそう言う。

 彼女の四門のエネルギー・キャノンの威力強化は絶大だった。


 これならこれから先、激しい戦いが待っていても乗り越える事が出来るであろう。


「俺たちもパワーアップが必要だな、ピュア」

「ええ! わたしたちも強化改造を!?」

「……誰もそんな事は言っていない。修練を積む必要があるって事だよ」


 俺たちはマシンナリーレディではない。

 機械の力で強くなる事は出来ないが、神霊憑依者としてもっと上手い力の使い道があるはずだ。


 それを模索する事に少し時間を使う事にしよう。


 敵味方のマシンナリーレディのパワーアップを肌身で感じた身としてはそう思わずにはいられなかった。


「まだまだ俺たちも強くなる。付いて来てくれ、ピュア」


 俺はピュアを見てそう言う。ピュアは頬を赤らめたが、頷く。


「は、はい! これからもご指導、お願いします!」

「ああ、頼むぞ」

「はい!」


 そうして俺たちは拠点に帰る。


 敵、マシンナリーレディがパワーアップしていたのは報告必須の情報だ。


 他の敵、マシンナリーレディもパワーアップする可能性があるのだから。


(美夏……お前も……)


 俺は幼馴染みの事を思う。いや、幼馴染みではない。今や異星に付いた敵だ。


 そんな甘い考えでいるからエイミーに逃げられるんだ。


 俺は甘い自分を叱咤し、今度は同じミスを犯さないと誓うのだった。


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