ミロスラーヴァの両肩に装備された大型エネルギー・キャノンから迸る光の奔流。
それが俺たちに迫り来るも俺たちはすんでの所でそれを回避していた。
あんなものまともに喰らっては神霊憑依者だろうと、マシンナリーレディだろうとひとたまりもない。
彼女が地球人類のために戦っていた時はあの威力で殺戮機械をまとめて蹴散らす大きな助けになってくれていたのだが、こうして異星の側に回った今となっては警戒して戦う対象にこそなれど、頼りにするなどとんでもない。
自分の放った光線が外れた事を察したのかミロスラーヴァは舌打ちする。
「なかなか当たりませんわね……!」
そう簡単に当たってたまるか。
俺は刀を握り締め、テレーシアとラリサに声をかける。
「俺が突っ込む! 援護してくれ!」
「分かりました!」
「了解」
俺は空を駆け、刀を手にマシンナリーレディ四人に突撃をする。
後ろからテレーシアがエネルギー・キャノンとガトリング・ガンを放ち、ラリサは四本のエネルギー・キャノンを放つ。
それらの射撃を受けながら、敵マシンナリーレディ、アデリタは右肩のミサイルランチャーからミサイルを放ち、ダナは両肩のビーム・マシンガンを唸らせる。
いくつかは後方の二人の援護で撃ち落とせたがこの身に迫り来るミサイルの弾頭とエネルギー状の弾丸は神の力の宿った刀で切り払う必要があった。
そうして接近。アデリタに斬りかかる。
アデリタは左肩のトマホークをサブアームで展開し、俺の斬撃を受け止める。そのまま刃を刃で押し合う。
「地球人ふぜいが! 生意気な!」
アデリタはそう吼え、一気に俺を叩き斬らんとしたようだが、こっちも接近戦ならそれなりに戦える。
アデリタの不利を見て、ミロスラーヴァが両腕のマイクロ・ミサイルランチャーを放つ。堪らず俺は後退する。
「気を付けてください! その男の剣は厄介ですわ!」
かつて共に戦った仲の実力を知っているのはこちらだけではないという事か。
ミロスラーヴァはそう言い、ティエクラが二本のレーザー・ブレードを構えてこちらにスラスターを噴かせ、突っ込んで来る。
俺も後方に神気を放ち、勢いを乗せ、ティエクラと正面からぶつかり合う。
刀とレーザー・ブレードが一合、二合と打ち合いを続け、お互いに押したり引いたりする。
ティエクラも俺の力量を知っているが、俺もティエクラの力量なら知っている。
一方的に押し負ける事はない。
そう確信し、刀を振るう。
アデリタとダナは敵中に突撃している俺を包囲しようとするが、そうはさせぬと後ろのテレーシアとラリサが砲撃を放ち、二人を牽制する。
アデリタとダナはそちらの迎撃に意識を集中させ、ミサイルランチャーとビーム・マシンガンで撃ち返す。
ラリサの膝部マイクロ・ミサイルポッドから放たれた小型ミサイルがアデリタの放ったミサイルの群れとぶつかり合い、爆発の光を広げる。
ダナは膝の機銃も放ち、テレーシアがこれにガトリング・ガンを放ち対抗するもののビーム・マシンガンの光弾を完全に撃ち落とす事は出来ず、体に光弾が次々に命中する。
咄嗟に両腕でガードしたようだが、ダメージは皆無でないだろう。
追撃を放とうとしたアデリタ、ダナに対してテレーシア、ラリサ、共にエネルギー・キャノンを放ち、牽制する。
後ろの二人のおかげで俺は包囲されずに済んでいるもののティエクラの二本のレーザー・ブレードと刀のぶつけ合いは続く。
それをしつつミロスラーヴァの方にも睨みを利かせる。
大型エネルギー・キャノンをぶっ放されては堪らないからだ。
ミロスラーヴァも隙を見せるとこちらに斬りかかって来ると悟っているのか両腕のマイクロ・ミサイルランチャーで援護するだけだ。
その辺りは流石にそれなりの時期、一緒に戦っただけの事はある。
こうして敵対峙に活かされてしまっているのが残念極まりないが。
ティエクラと剣劇を繰り広げていると、後ろからラリサが叫んだ。
「レーダーに2! 新手が来る!」
基本的に冷静な彼女が叫ぶとは珍しい、と思いつつも新手のマシンナリーレディか、と実戦的な思考を組み立てる。
どうする。四人相手に互角かやや優位。そこに敵の増援が二人。俺たちだけで対処し切れるものか。その増援は。
「甘粕光輝。この傷の礼よ」
「甘粕光輝……!」
エイミーと美夏だった。エイミーは以前の戦いで俺が断ち切った大型ガトリング・ガンの片方がまだ修復されておらず途中で銃身がなくなっている。
よりにもよってこの二人か……!
「美夏!」
無駄だと分かっているが、俺は幼馴染みに呼び掛ける。
美夏は俺に対し、敵を見る目を返し、両肩のミサイルランチャーの砲撃を返事にした。
「くそっ!」
俺は体を後退させてミサイルを避ける。
エイミーも残っている方のガトリング・ガンを唸らせ、俺に射撃を浴びせて来る。
「これはわたしからの意趣返しだよ! 甘粕光輝!」
嗜虐的な笑みを浮かべてエイミーが言うと片方だけになったガトリング・ガンに合わせて背部のマイクロ・ミサイルポッドが展開され小型ミサイルが撃ち出される。
先の戦いで片方のガトリング・ガンを斬った事を根に持っているのか。
そう思いつつ刀を振るい、神のオーラも駆使し、迫り来る銃弾と小型ミサイルに対処していく。
「プレゼント。死んでね!」
美夏も笑うと俺にエネルギー・ガン二丁で射撃を浴びせて来る。
美夏……! 幼馴染みの変わり果てた姿に俺は少し以上に思う所があったが、今はそんな事を言っていられる時ではない。
3対6。少しの油断も出来ない。
「一人は仕留める」
ラリサはそう言い、背部スラスターを噴かせて全身する。
そのままダナに突っ込んだ。
無論、迎撃のビーム・マシンガンと機銃が来るが、それに構わない勢いでラリサは両手にレーザー・ナイフを構え、突っ込んで行く。
そのまま両膝から小型ミサイルを撃ち出し、一気に接近した。
「ダナ!」
「させるか!」
ティエクラが救援に駆け付けようとした所に俺は立ち塞がり刀で斬り付ける。
これを迎撃しない訳にはいかないのかティエクラはレーザー・ブレードで受け止める。
アデリタがダナを援護しようとするも、そこにテレーシアがエネルギー・キャノンとガトリング・ガンを斉射し、牽制。
その間に接近したラリサはレーザー・ナイフでダナの体を突き刺した。
「ぐっ!」
「まだ」
何度も何度も突き刺す。
機械と融合しているマシンナリーレディとはいえ、生身の部分も残っている。
そこから赤い血が流れる。
俺なら罪悪感を抱いてしまう場面だが、ラリサは冷酷に攻撃を続け、とどめにゼロ距離でエネルギー・キャノン四門を放った。
「ぐあああああああ!」
ダナの体が粉砕されていく。一人、撃破。それを確かめる。
「ダナ!」
「なんという事ですの!」
アデリタがその名を呼び、ミロスラーヴァも叫ぶ。
仲間の死。それを味わった反応は異星に付いた後になっても以前と変わらない。
俺たちと一緒に地球のために戦っていた頃とまるで。
その事態が俺を困惑させる。
こいつらは纏めて異星に付いた敵。
それでもマシンナリーレディ同士で仲間意識で繋がっているんだ……。
それを感じてしまったからだ。そうなってしまってはもう斬れない。
「くっ、撤退するぞ!」
ティエクラがそう言って、マシンナリーレディたちが去って行ったのは幸運だった。
俺は息を大きく吐き出す。
相手はやっぱり元・地球人なんだ……その事態を認識したからだ。
「…………」
テレーシアも思う所があるのか去って行ったマシンナリーレディたちの方を見つめている。
ラリサは体に鮮血を浴びつつも特に気にした様子もなく、敵戦力の撃破を喜んでいるようだった。
「これで堂々と凱旋出来る。光輝、テレーシア、戻るよ」
「あ、ああ……」
「は、はい……」
とはいえ、こうして空に浮かび続けている訳にもいかない。
俺たちは食料調達班と合流するため降下するのだった。
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