レール・キャノンと対空機銃で迎撃して来る陸戦型大型殺戮機械に俺は接近する。
空を駆け、一気に肉薄し、弾幕を掻い潜る。
そして、刀をその装甲に突き立てるのだが。
「くっ、貫けないか……!」
流石はカスタム機。
神気を込めた刀で攻撃したものの、それは堅牢なる装甲に阻まれる。
もう一撃、と思った所でロボットアームがこちらに向って伸びて来たので再び空高く飛び上がり、避ける。
レール・キャノンと対空機銃が再び唸り、こちらに放たれる。
それらを切り払ったり、神気で受け止めたり、回避したりして、空中に戻る。
ピュア、テレーシア、ラリサはなんとかホーミング・レーザーを凌ぎ切ったようだ。
テレーシアとラリサが武装を展開してカスタム機を狙う。
テレーシアのエネルギー・キャノン、ガトリング・ガン、ミサイルランチャー。
ラリサのエネルギー・キャノン、マイクロ・ミサイルポッドが唸り、殺戮機械に降り注ぐが、これも殺戮機械は強固な装甲で防ぎ切ってしまった。
なかなかに厄介だ。
あるいは神霊覚醒者の力を呼び起こす事が出来れば倒せるかもしれないが、それが出来ない以上、今の所、普通の攻撃で何とかするしかない。
俺は刀の柄を握り締めると再び殺戮機械に接近。刀で斬り付ける。
強固な装甲に刀が弾かれる。切り裂くとはいかないか……!
そう思っているとピュアもやって来て、殺戮機械に剣で攻撃を仕掛ける。
が、それも弾かれる。
「か、硬い……!」
強固な装甲に思わずピュアの口から声が漏れる。
確かに硬い。神気を込めた剣でも斬り裂けないとは。
カスタム機の装甲は相当に堅牢なようだ。
それでも引き下がる訳にはいかない。
まずは二門あるレール・キャノンの片方を狙った。
そこに刀を叩き込む。レール・キャノンは本体装甲程の強度はなかったらしく俺の刀にすんでで切断される。
そのままもう片方のレール・キャノンも斬った。
こうなればエネルギー・キャノンを撃って来るしかないだろう。
さあ、撃って来い。俺はその瞬間を待ち望む。
案の定、胸部装甲が開放されエネルギー・キャノンの砲口が覗く。
そこにすかさず俺は神気を纏った刀を突き立てた。
内部に集束していたエネルギーが暴走し、内側から殺戮機械に襲い掛かる。
すばやく刀を引き、空に逃げる。
殺戮機械の胸部で爆発が巻き起こり、内部から崩れ落ちていく。
すかさずテレーシアとラリサは砲撃を浴びせ、殺戮機械を破壊する。
これにはひとたまりもなかった。
殺戮機械は対空機銃を力なく俺たちに放って来ていたものの、それも止み、その場に静止する。
とりあえずは倒せたか。
そう思い、俺は殺戮機械の傍に寄る。
静止した殺戮機械は再び動き出す事はなく、その場に佇んでいる。
空を埋め尽くす勢いでいた飛行型の雑魚の殺戮機械も全滅し、今回の殺戮機械の行軍はなんとか食い止めた形だった。
「やりましたね、皆さん!」
ピュアが元気良く声を上げる。
そんなピュアを好ましく思いつつもこの殺戮機械の装甲は厄介だな、と思っている自分がいた。
この装甲が他の殺戮機械にも標準装備されれば神気を込めた剣でも斬れなくなる。
そうなれば撃退する労力が格段に増してしまう。
「マシンナリーレディの砲撃でも破れない装甲なんてあるんですね……」
「厄介ね」
テレーシアとラリサも降下して来て、動かなくなった殺戮機械を見る。
彼女らの砲撃斉射でもこの殺戮機械の装甲は貫けなかった。
マシンナリーレディは異星の軍勢にとっても最上位の存在のはずだが、それに対抗し得る殺戮機械も開発されているという事だろうか。
「あぅ……」
撃破した殺戮兵器を前に考え込む俺たち三人を見て、純粋に喜んでいたのは自分だけだと知りピュアが落ち込んだ表情を見せる。
「ピュア、喜んでいいのは確かだ。とはいえ、こいつは厄介だな」
「そ、そうですか……これから先の戦いが大変ですね」
「全くね」
ピュアの言葉にラリサが頷く。
こいつレベルの装甲を持った殺戮兵器はそうそう現れない事を願いたいが、あまり楽観的な予測が許される立場ではないのも今の俺たちの立場だ。
「神霊覚醒者……あれになれるようになれば……」
そうだ。
あの力をいつでも出せるようになれば、このレベルの装甲を持った敵といえども倒せるだろう。
そう思っていると。
「ふぅん。あんたたちは地球人類の味方なんだ」
声がかけられた。
ハッとして俺たち四人は視線を向ける。
そこにはマシンナリーレディが一人滞空していた。
両肩にエネルギー・キャノンを展開し、右腕に手持ち式の長砲身のガトリング・ガンを持っており、腰にはレール・キャノンを装備している。
「マシンナリーレディ! 敵か!?」
俺が刀を振りかぶるが、その少女はこちらに攻撃を仕掛けて来る様子はない。
「私は異星の側に付いた覚えはないわよ。あんたたちと同じ、地球人類の味方のマシンナリーレディ。名前はペルニル・ドハーディ。自分のトコのレジスタンスが壊滅しちゃったから仲間を探して彷徨っていたの」
そう言い切るマシンナリーレディ、あらためペルニルの言う事に嘘はないような気がした。
ピュア、テレーシア、ラリサは警戒していたが、俺が近付く。
「本当に地球人類の味方なんだな?」
「当然。私は異星には付かないわ」
「それならこっちの拠点に案内しよう」
俺の言葉に三人は驚愕を示す。
「いいの!? 光輝さん!」
「軽率に思えるが……」
「光輝さん!?」
そんな三人の態度を見てペルニルはため息を漏らす。
「やれやれ、疑われたものね。まぁ、今の状況なら仕方がないけど」
「俺はお前を信じよう。お前が異星に付いたマシンナリーレディだったなら、俺たちがあの陸戦型殺戮機械に苦戦している時に攻撃を仕掛ける事も出来た訳だしな」
「ありがと。あんた神霊憑依者の甘粕光輝でしょ? 噂は聞いているわ」
「そいつは光栄だ」
ペルニルは笑みを浮かべる。
そこに打算の色はないように思えた。
俺はそこまで人物眼に優れているとの自覚はないのであるが。
「とりあえず私も貴方たちのレジスタンスの戦力に加わってあげる。これからの異星との戦いを見越した上で充分過ぎる戦力でしょ」
「君が味方ならね」
「貴方、口が悪いわねぇ……」
あくまで辛辣なラリサにペルニルは辟易する。
とはいえ、ラリサの疑惑ももっともだ。
俺も信じる事にはしたものの、もしかしたら異星の罠かもという思いを捨てきれてはいない。
そう思っていると空に飛行型の殺戮機械が四機現れた。全滅させたと思っていたが、まだ残っていたか。
「私の力の一部を見せるには丁度いいわね」
ペルニルはそう言うと右手に持つガトリング・ガンを向けて放つ。
ガトリング・ガンの直撃を受けた殺戮機械が撃墜される。
その後、レール・キャノンを放ち、さらに二機を撃墜。
ガトリング・ガンをさらに放って残る一機も撃墜した。
瞬く間に四機の飛行型殺戮機械が撃ち落された。
「とりあえず、腕前は充分なようだ」
ラリサが言う。確かに。戦闘力は充分なようだ。その点では不満は全くない。
「こんなものまだまだ私の本気じゃないからね。勘違いしないでよ」
「ああ。だが、君の力の一端を見る事は出来た」
「ふっ、当然ね」
とりあえずペルニルにも俺たちのレジスタンスに加わってもらうという事で意見が統一されたので俺たちは拠点に帰還する事にした。
それにしてもあの陸戦型殺戮機械の装甲は厄介なものであった。
あれが量産されるとなるとゾッとする。
それまでになんとか俺も神霊覚醒者に自由になれるようになっておかねば。
うかうかしている暇などない事を自覚するのであった。
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