【完結】反逆のマシンナリーレディ

地球文明崩壊。救世主と思われた存在は地球人類に牙を剥いた
和美 一
和美 一

第22話:マシンナリーレディとの激闘、ピュアの奮戦

公開日時: 2021年6月18日(金) 18:06
文字数:3,159


 それからはピュアの指導の俺の日常の一つとなった。

 これまでは一人で修練を積んでいた所をピュアも参加させ、戦闘技術を叩き込んで行く。


 この神霊憑依者になったからには覚えてもらわないといけないのは独特のオーラ、俺は神気と呼んでいるもの。

 それの扱いだ。


 これは剣に纏わせて斬り付ける事で殺戮機械の装甲を切り裂ける他に神気自体を飛ばす事で遠距離攻撃も出来るし、マシンナリーレディなどが放つ強烈な攻撃に対しては神気を壁として防御に用いる必要もある。


 とにかく神霊憑依者として戦うなら習得しておかなければならないものであった。

 それをピュアに教え込む。


「む、難しいですね……」


 ピュアは剣先から神気を飛ばして目標に命中させるというのに苦戦していた。

 目標はいらなくなったガラクタだ。それに向けて神気を纏ったサーベルを振るうもサーベルが空を斬るだけで神気は飛ばない。


 これはある程度以上の慣れが必要だから俺も今すぐ出来なくてそこまで強く言う気はない。


「慣れないとダメだからな。今、出来なくても仕方がないよ」

「……ですが、わたしも異星と戦う身。覚えておかなければまずいのでしょう?」

「それはそうだけど……」


 予想外の好戦さを見せたピュアに少し驚きつつも頷く。

 雑魚の殺戮機械相手なら剣に神気を纏わせて斬り付けるだけで事は足りると思うが、マシンナリーレディを相手にするとそれだけでは心許ない。


 マシンナリーレディの多くは銃火器で武装し、遠距離攻撃を仕掛けて来る。

 それを掻い潜って接近して斬り付けるのは今のピュアには少し難しいだろう


 とはいえ、その戦闘術も身に付けてもらわなければ困る。


 これから先の戦いで地球人類を守るために戦線に立つと言うのなら。


 そう思っているとテレーシアとラリサが慌てた様子でやって来た。


「大変です! 光輝さん!」

「レーダーに反応。おそらくマシンナリーレディ。この近くにいる」

「なんだって!?」


 それは驚くには充分の事だった。マシンナリーレディがやって来て地球人類の拠点を探しているのか。

 それは確かに放っては置けない。


「分かった。迎撃に出よう。数は?」

「四、ね」

「四人か……厄介だな」


 こちらの戦力は俺、テレーシア、ラリサ。そして、ピュアだが、ピュアはまだ戦闘に慣れていない。

 半人前以下と考えるのが妥当だろう。


 ピュアを連れて行くかどうか、俺は迷ったが。


「行きましょう、光輝さん!」


 本人の口から参戦表明が出て俺は少し驚く。


「敵は殺戮機械より高い戦闘力を持つマシンナリーレディだ。いけるのか?」

「いけるもいけないもないです。地球を侵略する悪い奴らなら神霊憑依者のわたしが戦わないと!」

「そうか……」


 そう意気込むのなら止める気はない。


 俺はテレーシアとラリサとも頷き合って、拠点を出る。

 そうして、廃墟に行った所にマシンナリーレディ四人はいた。


「美夏にエイミーにティエクラ……」


 四人の内、三人は俺のかつての戦友たちだった。

 もう一人はピュアの入っていたコンテナの前で戦って撤退に追い込んだマシンナリーレディだ。


「甘粕光輝か」


 美夏が俺を見て言う。

 そこにはやはり幼馴染みの親愛の情などまるで感じさせない敵意に満ちた響き。


「このガトリングのお礼をさせてもらうわ」


 エイミーの両肩の大型ガトリング・ガンの内、一本は俺が斬り落としたはずだが、今は修復されたのか二本とも健在だった。あれでの斉射も厄介だ。


「光輝さん、あの人たちが……」

「ああ。話したとは思うけど、地球を裏切ったマシンナリーレディだ」

「そうなん、ですね……!」


 ピュアが緊張した様子でサーベルの柄を握る。


 殺戮機械は人間とはかけ離れた姿をしているから戦えたかもしれないが、マシンナリーレディは人間の少女が武装しただけのような姿をしている。


 果たしてそれを相手にピュアが本気で戦えるのか。少し心配に思う。


「仲間の仇を討つ」


 コンテナの前の戦いで二人いた内の一人を俺たちに殺され、撤退したマシンナリーレディが右腕のエネルギー・キャノンをこちらに付き付けて来る。


 仇、か。やはり異星に寝返ったとしても人間は人間。

 その憎しみの感情を感じ取れば、ピュアでなくとも俺も思う所がある。


「何よ、地球を裏切った癖に。仇なんて笑わせる」


 そんな相手にラリサが挑発するように言い放つ。

 これに敵、マシンナリーレディはカッと顔を赤くする。


「貴様!」


 そのマシンナリーレディが右腕のエネルギー・キャノンを放ち、その閃光が戦いの火蓋を切った。


 俺たちは散らばり、エネルギー・キャノンのエネルギー弾が道路に着弾し、吹き飛ばす。


 すかさずラリサは四門のエネルギー・キャノンを展開し、反撃に一斉射撃する。

 これに美夏も両肩のミサイルランチャーを、エイミーは大型ガトリング・ガンをこちらに向けて放って来る。


 静寂が支配していた廃墟は打って変わって砲火交える戦場と化した。

 テレーシアもエネルギー・キャノンとガトリング・ガンを放ち応戦する。


 エイミーの背部マイクロ・ミサイルポッドからも小型ミサイルが放たれ、対抗にラリサは膝部マイクロ・ミサイルポッドから小型ミサイルを放つ。


 小型ミサイル同士がぶつかり合い、爆散し、他はお互いのガトリング・ガンの銃弾が撃ち落とし、廃墟の町に閃光を幾重にも照らさせる。


「光輝さん、わたしたちは……」

「砲撃の合間を縫って行くぞ。俺に付いて来い」

「は、はいっ!」


 本当ならピュアは戦線に参加させず下げたい所だが、それではいつまで経ってもマシンナリーレディ相手の戦いに加われない。


 多少スパルタでもここは実戦経験を積んでもらおう。

 俺は刀を抜き放ち、ピュアはサーベルを構え、前に進む。


「甘粕光輝!」


 俺の前に二本のレーザー・ブレードを武器にするマシンナリーレディ・ティエクラが立ちはだかる。

 俺は刀を振るい、斬りかかり、ティエクラはレーザー・ブレードで応戦する。


 そこにピュアも入り、サーベルで斬りかかる。


「えいっ!」

「くっ、この小娘は!?」


 ティエクラの驚愕の表情。

 それでもピュアのサーベルをレーザー・ブレードで受け止めて弾き返す。


 ピュアの小柄な体は後ろに吹っ飛ばされた。


「マシンナリーレディじゃない!? まさか甘粕光輝以外の神霊憑依者!?」

「どの道、吹き飛ばすだけよ!」


 美夏が驚きの声を発し、エイミーがその隣でガトリング・ガンをこちらに放って来る。


 俺は刀を振るい、その弾丸を切り払っていく。


 ティエクラのレーザー・ブレードの射程内だったので体を後ろに下げて、結果的にピュアを庇うような立ち位置に立つ。


「甘粕光輝を仕留める!」


 ミサイルランチャーをこちらに放って来る美夏。

 そのミサイルの弾頭も刀で切り払い、切り払い切れなかったものは神気を壁として前に押し出し、防ぐ。


 ミサイルが爆散し、その光が眩しく廃墟を照らす。


「こ、光輝さん……」

「ピュアは後ろに下がっていてもいい! 俺はこいつらを倒す!」


 やはりマシンナリーレディ相手の実戦参加は早すぎたかもしれない。

 俺の後ろで半ば腰を抜かしているピュアにそう言うと俺は刀を構える。


「いえ! わたしも戦います! 守られてばかりなんて嫌です!」


 しかし、意外にもピュアはサーベルを構えて俺と肩を並べて見せる。


 意外と強気な所もあるんだな、とピュアへの認識を改め、俺たちはマシンナリーレディに対峙する。


「よし! それなら行くぞ!」

「はい!」


 地を蹴り、マシンナリーレディに向って行く。

 気付いたラリサが四本のレーザーを放ち俺たちを援護する。


 それで分断された敵マシンナリーレディに俺とピュアが斬りかかる。


 ティエクラがレーザー・ブレードを振るい、立ちはだかるがそれに俺とピュアは刀とサーベルで斬りかかった。


 二対一で剣を打ち合わせ、流石のマシンナリーレディのティエクラでも少しの焦りを見せる。


 ピュアがどれだけ戦えるのか。そう思いながら俺も刀を振るうのだった。


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