【完結】反逆のマシンナリーレディ

地球文明崩壊。救世主と思われた存在は地球人類に牙を剥いた
和美 一
和美 一

第25話:異星の基地を巡る戦い

公開日時: 2021年6月19日(土) 18:06
文字数:3,087


 異星の連中が地上拠点を築こうとしている。


 それ自体は珍しい事ではない。

 星の外から基地となり得る資材を投下し、地上で組み上げる。


 そうして、殺戮兵器を格納するのだ。

 しかし、この近くにその資材が投下され、組み上げられている最中というと放っておく訳にはいかなかった。


 レジスタンスの拠点の会議室に集まった俺たちは机の上に広げられた地図を前に意見を交換していた。


「やはり叩き潰すべきです。今ならそれが出来ます」

「俺も甘粕に同意見だが……厄介な妨害が予想されるぞ。マシンナリーレディも多数導入されるだろう」


 俺の意見にブラッドは同意を示しつつ、懸念を口にする。


 確かに。基地設営ともなると殺戮機械だけでなく、マシンナリーレディを護衛として投入してくるだろう。

 それを撃破しなければならない。


 困難が伴う事だろう。だが、対価も大きいと見る。


「この設立中の基地を落とせば多くの物資が手に入ります。それ目当てでもやるべきです」

「そうだな……となるとお前たち四人だけに行かせる訳にはいかん。俺が部隊を率いて行こう。いいですよね?」


 ブラッドがラリサのレジスタンスのリーダーの方を見て確認を取る。リーダーは頷いた。


「うむ。虎穴に入らずんば虎子を得ずの状況だ。危険だが、ここは兵力を出して制圧に乗り出す事にしよう」

「よし。お前らはいいんだな?」


 許可を得てブラッドは今度は俺の後ろにいるテレーシア、ラリサ、ピュアの方を見る。三人共頷いた。


「やってみます!」

「任せて」

「わたしもやります!」


 三人共、この任務に挑むのに問題はないようだ。

 おそらくマシンナリーレディが多く立ちはだかると予想される。


 そうなればこちら側は俺たち四人でそれら全てを打ち倒すつもりでかからないとダメだ。


 俺も覚悟を固める。

 エイミーであろうと、ミロスラーヴァであろうと、ティエクラであろうと。……美夏であろうと、俺の刀で斬り捨てる。


 その覚悟を固める。無論、他の見知らぬマシンナリーレディであったとしても、だ。


 時間との戦いになる。

 基地が完成して迎撃機構が整えられると手が出せなくなる。


 俺たちはすぐに出撃した。

 俺たち四人が先行し、ブラッド率いるレジスタンスの兵が遅れてついて来る。


 そうして、進むと早くも飛行型殺戮機械の群れと遭遇する。


「防備には気合いを入れてるみたいだね」

「だな。行くぞ、みんな!」


 ラリサの言葉に頷くと俺は刀を構えて突っ込む。

 ピュアもサーベルを手にそれに続き、ラリサは四門の細身のエネルギー・キャノンの銃身を展開し、放つ。


 テレーシアはエネルギー・キャノンとガトリング・ガンを斉射し、殺戮機械を撃ち落していく。


 その砲撃に紛れて俺とピュアは殺戮機械に接近、剣で斬り付け、次々に撃破する。


 もはや、この程度の雑魚、相手にならない。


 そうやって殺戮機械の群れを撃破していると、奥から極太のレーザーがこちらに放たれた。


 慌てて俺とピュアは回避する。これだけのものを放てるのは……。


「外しましたか」


 やはり。

 そこには両肩に大型エネルギー・キャノンを展開したマシンナリーレディ・ミロスラーヴァの姿が隣にはアデリタとか呼ばれていた右肩にミサイルランチャーを左肩にサブアームとトマホークを装備したマシンナリーレディの姿もある。


「奴らはダナの仇だ。必ず仕留める」


 どうやらアデリタもこちらに敵愾心を燃やしているようであった。


 まずは二人出て来たか。

 護衛のマシンナリーレディがこの二人だけとは考え難い所だ。


 まだいるだろう。

 だが、二人だけの時に仕留められるのなら仕留めたい。


 戦力の逐次投入は愚策。その愚を敵が執って来たなら最大限利用してやるまでだ。


「光輝さん……」

「あの二人から仕留める。行くぞ」

「はいっ!」


 俺とピュアは空を駆け、二人のマシンナリーレディに接近。


 テレーシアとラリサが後ろから援護射撃を放つ。


 ミロスラーヴァの腕部マイクロ・ミサイルランチャーとアデリタの右肩のミサイルランチャーが火を噴き、ミサイルが無数にこちらに迫るがそれらをあるいは切り払い、あるいは神気で受け止め、強引に突破していく。


 そのまま距離を詰めて刀を振るおうとするが、アデリタの左肩のサブアームに保持されたトマホークが振り下ろされ、刀と打ち合う。


 そこにピュアがサーベルで斬りかかろうとした時、それを牽制するように奥からもう一人のマシンナリーレディが背中の装備したエネルギー・キャノンを放って来た。

 初めて見るマシンナリーレディだ。敵の戦力だろう。


 俺はアデリタのトマホークと刀を何合も打ち合わせ、なんとか刀で斬れないかと狙うが相手もそう甘くはない。


 やっている間にミロスラーヴァは腕部マイクロ・ミサイルランチャーを放ち、もう一人のマシンナリーレディは背中のエネルギー・キャノンを連射してくる。


 ピュアはそれらの攻撃に翻弄され、なんとかサーベルで防御をしている。


 こちらの後ろにいたテレーシアとラリサも出て来て、テレーシアがガトリング・ガンで射撃、ラリサは膝部マイクロ・ミサイルポッドから小型ミサイルを飛ばす。


 新顔のマシンナリーレディは背中のエネルギー・キャノンに加え、両腕に保持したガトリング・ガンを放って来る。


 また厄介なマシンナリーレディが増えたか。

 そう思いながら俺は前方に神気を放出。後ろに下がり、振り下ろされたアデリタのトマホークを避け、距離を取る。


「まとめて蹴散らして差し上げますわ!」


 言っている間にミロスラーヴァが両肩の大型エネルギー・キャノンの銃身にエネルギーを伝達させる。

 大砲が来る。それを予感し俺はピュアに警戒を促す。


「気を付けろ! あれを喰らうと神霊憑依者でもタダじゃ済まないぞ!」

「は、はいっ!」


 ミロスラーヴァのエネルギー・キャノンが放たれる。

 なんとか俺とピュアはそれを回避するが、そこを狙ってアデリタのミサイルランチャーからミサイルが放たれ、こちらに迫り来る。


 こちら側もテレーシアとラリサがエネルギー・キャノンを放ち、レーザーが発する光に周囲が照らされる。


「ダナの仇! お前は!」


 アデリタがラリサを睨み、そちらにミサイルランチャーからミサイルを放ちながら、突っ込んで行く。


 ラリサは四門のエネルギー・キャノンと膝部マイクロ・ミサイルポッドで迎撃するが、アデリタの勢いは止まらない。

 接近し、左肩のサブアーム・トマホークでラリサを一刀両断にせんとする。


 ラリサの普段は冷静な顔に焦りの色が浮かぶ。


「くっ」

「ラリサ!」


 そこにテレーシアがガトリング・ガンを放ち、アデリタは咄嗟に後ろに下がる。


 そのままテレーシアはエネルギー・キャノンも放ちアデリタを引き剥がす。


 その隙は逃さずラリサが再び四門のエネルギー・キャノンを放つ。


 これを避け切れなかったアデリタは左肩のトマホークを撃ち抜かれ、失う。


 接近戦用の武器がなくなった。

 さらにアデリタはこちらに突出して来ている。この好機を逃す手はない。


 俺は刀の柄を握り締め、アデリタに接近。刀で斬り付ける。


「ぐあっ!」


 袈裟懸けに刀がアデリタの体を斬り裂き、ミロスラーヴァともう一人のマシンナリーレディの援護も間に合わず俺は心臓部に刀を突き立てる。


「ぐふっ!」


 心臓を貫き、背中から貫通した刀の刃が見えている。


 俺は刀を引き抜く。鮮血を舞い散らせ、アデリタは力なく地上に向って落ちて行った。


「アデリタ!」

「よくも!」


 敵、マシンナリーレディ二人が激昂する。


 とりあえず一人、撃破。まだまだ油断は出来ないが。


「やったわね、光輝」

「ああ。この調子でいこう」


 声をかけて来たラリサに頷き、残る二人の敵、マシンナリーレディを見据える。


 建設中の異星の地上基地をめぐる攻防は始まったばかりだった。


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