最強のマシンナリーレディ・シビーユ。
その武装は両肩にレール・キャノンと背部にミロスラーヴァの大型エネルギー・キャノンにも匹敵する威力の大型エネルギー・キャノンが二門。
そして、手持ち武器として銃と剣が一体になった多用そうで扱いにくそうな武器を持っている。
何よりもこのマシンナリーレディの売りはほとんどの攻撃をシャットアウトするバリアであろう。
俺とピュア、神霊憑依者の神気を込めた剣ならバリアを貫通出来るようだが、テレーシアとラリサの砲撃のほとんどを耐えてのけた。
それを破るためにテレーシアとラリサは徹底して火線を集中させ、ありとあらゆる砲撃を浴びせに浴びせてようやく破れたくらいだ。
他のマシンナリーレディと同時に相手をする状況で砲撃でバリアを破る事は不可能と言っていい。
ならば俺かピュアが神気を纏った剣で斬りかかるしかないのだが、それも他のマシンナリーレディが敵としている状況では難しい。
(それでも、やらないとな……!)
俺は決意を込めて刀の柄を握る手に力を込める。
強敵とはいえ、引き下がる訳にはいかない。
なんとしてもここで撃退しなければならない。
俺はピュアを見る。ピュアは無言で頷いた。
自分たち神霊憑依者が相手をしなければならない敵だと言う事は分かっているのだろう。
「行くぞ、シビーユ!」
まずは俺から斬りかかる。シビーユはバリアを展開する。
神気を纏った刀を前にしてはバリアは無用の長物だが、背後のテレーシアとラリサの援護射撃を防ぐ意味はある。
神気を纏った刀はやはりバリアを貫通し、シビーユの手持ち武器と刃を打ち合わせる。
一合、二合、剣戟を繰り広げ、俺が追撃しようとした時、
「お前は私の獲物だ! 甘粕光輝!」
エイミーが右腕の機械腕の爪でこちらに斬りかかって来たので後退してそちらを刀で受け止める。
ピュアがこちらに援護に来ようとしたようだが、美夏が大型ミサイルランチャーからミサイルを放ちピュアを押し留める。
ミロスラーヴァも腕部マイクロ・ミサイルランチャーを放ち、牽制する。
しかし、シビーユ以外の三人にはこちらのマシンナリーレディの砲撃も効く。
テレーシアとラリサが一斉射撃を放ち、美夏とミロスラーヴァを牽制。
その隙にピュアはこちらにやって来て、シビーユに斬りかかる。
シビーユは迎撃に肩部レール・キャノンを放つがそれを掻い潜り、ピュアは接近。
剣で斬りかかる。これをシビーユは自らの武器で受け止める。
ピュアの剣の腕前はまだ最強のマシンナリーレディ・シビーユと渡り合える域には達していない。
次第に押されがちになり俺は援護に行こうとするも目の前のエイミーがそれを許してはくれない。
右腕の爪と左腕のレーザー・ブレードを振るい、俺に斬りかかる。
俺は刀でそれらを捌きつつ、なんとかピュアの援護に行こうとするが、そう上手くいかない。
エイミーの攻撃がしつこくこちらに付き纏ってくるのだ。
「お前と遊んでいる暇はない!」
「そう言わないでよお・に・い・ちゃ・ん!」
エイミーがかつて俺と共に戦っていた時の俺に対する呼称を使って来る。
無論、挑発だ。俺は苛立ち、刀を振るう。
そうしている隙にミロスラーヴァが大型エネルギー・キャノンのエネルギーチャージを完了したらしくこちらに向けて放って来る。
シビーユを巻き添えに。
「なっ!?」
シビーユが思わず声を上げる。
シビーユと接近戦を行っている最中だったピュアは慌てて後退しなんとか射線から逃れる。
後ろのテレーシアとラリサにも当たらなかったようだ。
「収穫はなし、ですか」
ミロスラーヴァが惜しそうに言う。これには流石のシビーユも怒りを露わにした。
「わたくしごと撃つなんて……」
「いいじゃない。どうせエネルギー・フィールド張っているんですから」
「そういう問題ですか?」
敵の不和はよっぽど深刻なようだ。
いくらバリアを張っていてダメージを受けないとはいえ、味方ごと撃つとは。
そう思っているとエイミーと距離が開いていた。
エイミーはガトリング・ガンとマイクロ・ミサイルをこちらに放って来る。
それらを切り払うか神気で受け止める。
そこに後方から四筋のレーザーが。ラリサの四連装エネルギー・キャノンだ。
これをエイミーはなんとか回避する。
「その小さいのは僕が引き受けた」
ラリサがそう言ってこちらに接近しながら膝部のマイクロ・ミサイルポッドを放つ。
「誰が小さいのよ!」
エイミーは怒り、ガトリング・ガンでラリサを迎撃する。
それを掻い潜りながら再び四連装エネルギー・キャノンが放たれる。が、これもエイミーは紙一重で回避する。
俺はシビーユに接近し斬りかかろうとするが、そこに美夏が妨害に来る。
と、思いきや後方のテレーシアが前に出て来て、美夏にエネルギー・キャノン、ガトリング・ガン、ミサイルランチャーの斉射を浴びせて後ろに下がらせる。
「サンキュー、テレーシア」
「いえ! 光輝さんはシビーユを!」
「分かっている!」
力づくでバリアを破る暇がない以上、バリアを無効化出来る神霊憑依者がシビーユの相手をするのが正解だ。
俺はシビーユに接近し、刀で斬り付ける。
相手も最強の称号を手にしたマシンナリーレディ。
バリアだけに頼っている訳ではなく手持ちの武器で俺の刀を受け止める。そのまま打ち合いが続く。
美夏はエイミーやミロスラーヴァ程、協調性皆無という訳ではないようでシビーユの援護に駆け付けようとする。
そういう所も昔の世話焼きな幼馴染みのままか、と俺は苦い感触を抱いたが、それを妨害してテレーシアが砲撃し、ピュアが剣で斬りかかる。
テレーシアの砲撃を回避し、ピュアの斬撃も回避する。
美夏は一旦後退して、距離を取ると大型化したミサイルランチャーから無数のミサイルを放って攻撃して来る。
テレーシアがガトリング・ガンとこちらもミサイルを放ちそれらを撃ち落し、ピュアは剣でそれらを切り払う。
エイミーはラリサが抑えている。
ガトリング・ガンを撃ちながら距離を詰めて来るエイミーにラリサはミサイルを撃ちつつ両手にレーザー・ナイフを持って接近戦で応戦する構えだ。
エイミーの右腕の機械腕の爪と左腕のレーザー・ブレードが唸り、ラリサのレーザー・ナイフとぶつかり合う。
「そんなちゃちいナイフでこの私とやり合おうなんて!」
「さて、それはやってみなければ分からない」
事実、エイミーの爪と剣の猛攻をラリサはナイフ二本で捌いて見せていた。
射撃戦だけでなく接近戦でも頼りになる味方だ、ラリサ。
俺はシビーユと斬り合っているとシビーユが後退してミロスラーヴァの元まで戻った。
「美夏、エイミー、少し前線を支えて下さい!」
何が目的だ。俺は追撃しようとするが、そこに美夏がエネルギー・ガンを放ち牽制する。
「ミロスラーヴァ、先ほどの事は不問にします。わたくしと同時にエネルギー・キャノンを撃ち、地球人類を一掃するのです」
「それは面白そうね、やりましょう」
何やら凄く不穏な事を言っている気がする。
シビーユとミロスラーヴァの背中の大型エネルギー・キャノンがどちらも展開され、こちらを狙って来る。
「まずい!」
そのやばさを察して俺は思わず声を上げる。
単体でも勝負を決められる威力のあるミロスラーヴァの大型エネルギー・キャノン。
それに加えてシビーユの大型エネルギー・キャノンも同時に放たれようとしている。
それがどれほどの威力になるものか。
恐ろしいったらありゃしない。俺はなんとか全員に退避を促そうとする。
前線で俺たちを足止めしていた美夏とエイミーは既に後方にスラスターを噴かせて飛び去っている。
こちらもなんとか退避を。そう思った瞬間。極太のレーザーが放たれ、俺たちの視界を光に染めた。
読み終わったら、ポイントを付けましょう!