【完結】反逆のマシンナリーレディ

地球文明崩壊。救世主と思われた存在は地球人類に牙を剥いた
和美 一
和美 一

第37話:最強のマシンナリーレディ

公開日時: 2021年6月23日(水) 23:06
文字数:3,117


 マシンナリーレディの襲来。

 それはテレーシアとラリサがレーダーで探知した。


 このレジスタンスの拠点を知られる訳にはいかない。


 俺たちは早速、出撃し、マシンナリーレディを迎え撃つ事にした。


「エイミーの修復はまだ終わってないはずだ。出てこないだろうし、出て来ても大した相手じゃない」


 俺はそう言う。あの時、尋常ならざる力を発揮した俺の手によりマシンナリーレディ・エイミーは右腕を斬り落とされ、メインウェポンの四門のガトリング・ガンも破壊された。


 今は出てこれる状態ではないはずだ。俺の言葉にラリサも頷く。


「そう。今回も出て来たマシンナリーレディは叩くまで」

「出来れば撃破したいですね」


 ラリサの言葉に続き、テレーシアが言う。


 そうどれだけ損害を与えようとも修復が可能なのだ。


 敵の戦力を削ぐつもりなら損傷させるだけではなく撃破しなければならない。それは分かっているのだが……。


(ええい……夢だ、夢!)


 今朝がた見た夢の事を思い出し、複雑な気分になる。


 たとえ、美夏が敵側で出てこようともその命を絶つ事を目的に戦う。それに違いはない。


「わたしも頑張ります!」


 ピュアも気合いを入れた言葉を発する。


 ピュアもこうだというのに俺が躊躇っていてどうする。


 俺は決意を新たに、刀の柄を握る手に力を込める。


 そうして空を駆け、敵、マシンナリーレディを発見する。一人だった。


 周りに殺戮機械もいなければ他のマシンナリーレディもいない。


 金色の髪を腰まで伸ばし、両肩にレール・キャノン。背中に大型のエネルギー・キャノンを背負い、手には銃と剣が一体になったような武器を握っている。


 一人か。それなら恐れるに足らない。そう思った俺だが。


「初めまして、皆様。わたくしはシビーユ・ストゥワートを申します。アゴルモンアのマシンナリーレディです」

「なっ、シビーユだって!?」


 俺は思わず驚きの声を漏らす。

 テレーシアとラリサも驚いている様子だ。ピュアだけがきょとんと首を傾げる。


 シビーユ・ストゥワート。それはマシンナリーレディの反逆以前に世界最強のマシンナリーレディと名を轟かせ、人類の希望の星となっていたマシンナリーレディの名前であったからだ。


「異星に付いたんだ。世界最強」


 ラリサが皮肉を言う。シビーユは優雅な笑みを崩す事はなかった。


「本来の居場所に戻っただけです。貴方たちこそマシンナリーレディなのにいつまで地球人類の味方をし続けるつもりですか? アゴルモンアに来なさい」

「私たちは地球人です! 異星に付くなんてとんでもない!」


 勇んでテレーシアが勧誘を跳ね除ける。


 その姿勢は本当に頼りになる。多くのマシンナリーレディが地球を裏切り、異星に付いた今、貴重なマシンナリーレディの味方だ。


「世界最強とはいえ、一人で来るとは舐められたものだね。僕たち四人に勝てるとでも?」

「ええ、勝てますと思いますわ」


 シビーユは相変わらず優雅な笑みを崩さない。

 異星に付いたマシンナリーレディとは思えない。地球人類に未だ味方してくれているかのような態度だ。


 だが、敵だ。間違いなく目の前のマシンナリーレディ・シビーユは異星に付いた敵である。


 ならば、情けをかける訳にもいかない。


 テレーシアとラリサが武装を展開する。


「行きますよ!」

「これで吹き飛べ」


 テレーシアが右肩のエネルギー・キャノンと左肩のガトリング・ガン、両腰のミサイルランチャーを斉射。

 ラリサも四門のエネルギー・キャノンと膝部マイクロ・ミサイルポッドを斉射する。


 それらが全てシビーユに迫り来る。


 マシンナリーレディとはいえ、これらの全ての直撃を受けてはただではいられない。


 これで撃墜する姿を俺は幻視したが。


「エネルギー・フィールド」


 シビーユはそう言うと自身の周囲にバリアを張り、自身に迫り来る砲火を全て防いで見せた。これが世界最強か……! 俺は警戒する。


「マジかよ……」


 テレーシアもラリサも強化改造を受けてその砲火の火力は段違いに上がっているはずだ。


 それら全てが押し寄せたのに受け止めて耐えて見せるバリアとは。


 世界最強も伊達ではないと言う事か。それが敵に回ってしまったのは最悪だ。


「ピュア、行くぞ!」

「はい! 光輝さん!」


 俺はピュアに声をかけ、空を駆け、シビーユに接近する刀で斬りかかる。


 シビーユは銃を剣が一体になった武器でその一撃を受け止める。


「神霊憑依者……侮れる存在ではありませんね」

「あんたもな!」


 俺が引き下がると同時にピュアが前に出て、剣を振るうがそれもシビーユは自身の武器で受け止め弾き返す。


 そうして、両肩のレール・キャノンが唸る。放たれた弾丸はピュアに命中する。


「ピュア!」


 思わず叫ぶ。神気で受け止めたのは見えていたが、それでも声に出ていた。


「だ、大丈夫です! 光輝さん!」

「神霊憑依者ですか。厄介ですね」


 シビーユは手にした武器から銃を俺に向けて撃って来る。


 それらを刀で切り払うか、神気で受け止めるかして俺もなんとか耐える。


「光輝さん!」

「援護を!」


 テレーシアとラリサがこちらに援護の砲火を放とうとするが、それを察したシビーユが牽制に両肩のレール・キャノンを放ち、テレーシアとラリサはそれを回避する。


 その隙に大型エネルギー・キャノンを展開し、それを放とうとする。


 このエネルギー・キャノン。威力はミロスラーヴァのものに匹敵するのでは……。


 そう思った俺は回避姿勢を取る。ピュアも回避の構えだ。


 大型のエネルギー・キャノンが放たれる。そのレーザー光に飲み込まれないように俺たち四人は回避する。


「ふふふ、一筋縄ではいきませんか」


 シビーユは余裕だった。一対四という圧倒的不利な状況においても余裕を振りまき優雅に戦って見せる。


 全く。敵に回ったのが惜しい存在だ!


「くそっ!」


 俺が前に出て刀で斬りかかる。それをシビーユは自身の武器で受け止め、弾き返す。


 引き続き斬り付けるが、それも弾かれる。


 あの時の力が出せれば、と思う。

 あの時の常軌を逸した俺の力。あれが出せれば最強のマシンナリーレディ相手といえど敵ではないというのに。


 だが、その力を発揮出来ない以上、今の力で戦うしかない。


 俺の攻撃に合わせてピュアも接近し二対一で斬りかかるもそれらを優雅さすら感じさせる武器捌きでシビーユは防ぎ切る。本当に大したものだ。


「二人共!」

「下がって!」


 背後から声。テレーシアとラリサだ。


 それに合わせて、俺とピュアがシビーユから離れる。

 直後、テレーシアとラリサの砲火がシビーユに襲い掛かった。


 しかし、これもバリアを張り、シビーユは耐える。


 そのままレール・キャノンとエネルギー・キャノンを撃って来る。バリアの内側から。


「あのバリアは一方通行かよ!」


 どうやらバリアを張りながらでも内部から外へは射撃出来るらしい。


 それらの射撃をテレーシアとラリサは回避しながら反撃の射撃を放つもそれらはバリアに受け止められる。


「この!」


 俺は接近し、バリアに斬り付けようとする。


 神気を纏った刀が振り下ろされると俺にとってもシビーユにとっても想定外の事が起こった。


「っ!?」


 神気を纏った刀はバリアを貫通したのだ。


 シビーユの体に刀が触れる寸前、咄嗟にシビーユは武器で刀を受け止める。


「エネルギー・フィールドを破るとは……神霊憑依者というのはなかなか厄介なもののようですね……」


 初めてシビーユが焦りを見せた瞬間だった。


 俺もまさかバリアを貫通出来るとは思わなかった。神気のおかげだろうか。神気を纏わせた刀ならバリアをないものとして扱って攻撃出来る。


 シビーユもそれを理解し、警戒の面持ちを見せる。


 不意を打って斬りかかる、というのは通用しなさそうだ。


 後は最強のマシンナリーレディとやらを相手に俺たちでどこまでやれるか。俺は再度、刀を振るうのだった。


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