へぇ・・
そうなんだ
そう思ってから直ぐに松本は用事が出来たと言って会社へ戻った。
あいつ・・会社員なん?
奇想奇天烈な摩訶不思議、そんな事象に沢山出会った日だった。僕は枕もとに松本から保管を受けた辞典(もう、魔術書と言っていいのだろうと思う)を置きながら、眠りについた。
眠る時少し揺れたような気がした。地震かもしれない、しかしそんなことはどうでもよい程疲れていた。
窓越しに聞こえる蝉の声。
真夏の太陽は沈まないのか?
顔に当たる強い陽ざしを避けるように手をかざすと、僕はテレビをつけた。
画面に昨晩揺れた地震の事が報道されている。北海道の方で揺れたようだ。多くの土砂が崩れ落ちている空撮の映像が見えた。
起きると寝ぐせを手で押さえつけ、パンを齧る。
僕はスマホに目を遣った。
(こうしたことが僕の不注意で起きたことだというのだろうか?)
不安が混じるパンを一口、齧った。
(本当だろうか?)
LINEが鳴った。見ればイズルからだった。メッセージを見る。
#ほんまやでこだま!!
うちら天才やカラ!!
何が?
心の中で問いかける。
すると写真が来た。
細いロープの上で、イズルとマウロがヘルメットを被りながら片足を踏ん張りながら片手を繋ぎ、片方の手足を空に向かって大きく開いている。画面下には巨大なキリスト像が見えた。
(これってブラジルのリオデジャネイロにあるコルコバードのキリスト像じゃねぇ??)
まじか??
アイツら・・今ブラジル??
あまりにも唐突な行動をとるイズルとブラジル出身のマウロ。この組み合わせなら、アリだな・・そう思った時、良く写真の下を見ると普通に床が見えた。
なんだ・・ヴァーチャルリアリティ・・かよ
僕は返信する。
#イズル・・下の方で床が見えてる
きっと得意満面であいつら僕に送って来たんだろうな。得意満面の二人が一気に残念な表情になるのが浮かんだ。
返信が来た。
#くっそー
うちらの魔法、効かへんかったか!!
くすりと笑いながら返信する。
#ちなみに魔法の名前は?
数秒して返信が来た。
#忍法!!
雲隠れ
あー
うちらが地元から消えて驚く思うてんけどな!!
残念
そかそか、
残念やったな
でもな、イズル
それ
魔術じゃなくて・・
忍者の忍法だよ。
僕はスマホから目を離して立ち上がった。
今日、バイクを買いに行くんだ。これから。
イズルに返信するとリュックに魔術書を入れて急いで部屋を出た。
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