太陽の光が眩いくらいに差し込み、子供たちの元気な声が聞こえる町、陽光町。
そんな町の商店街の通りを、栗毛色の髪の姉弟が手を繋ぎながら仲睦まじく歩いていた。
「知ってる? 陽光公園に新しいアミューズメント施設ができるんだって!」
「アミューズメント施設?」
栗毛色の髪を上部で編み込んだ、スクールセーラーを着た少女は、キョトンとした表情で聞き返した。
「うん! ずっと建設中だった場所。あそこが遊園地としてオープンするんだって!」
弟は手に持っていたパンフレットを姉に手渡した。パンフレットには大々と、『遊園地、プレオープン記念!』と書かれており、日付は今日となっていた。
「そうなんだぁ、私、全然知らなかった」
「この広告、小学校で貰ったんだよ!」
パンフレットの右上には三角形の切り取り線があり、小学生以下限定と書かれている。これが入場券として使えるようだ。
「それでね、ゆう君と待ち合わせの約束してるんだ!」
「ゆうきくん?」
「うん!」
(じゃあもしかして、黒城くんも来てくるかも……。って、何考えてるんだろ私!)
「……? どうしたの、ねぇね」
栗毛色の髪の少女は、赤らめた頬をブンブンと左右に振っていた。
商店街を抜けると、目の前に公園があった。ここが遊園地のプレオープンが行われるという陽光公園だ。
「着いた!」
弟は公園に着くや、数メートルほど走って姉に手を振った。
「たくみ、一人でも大丈夫?」
「うん! ここまでありがとう!」
「どういたしまして」
(小学生以下限定のイベントかぁ……。遊園地、私も遊びたかったなぁ……)
中学二年生の栗毛色の髪の少女は、弟を笑顔で見送ってその場をあとにした。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
真逆の方角からは、黒髪の少年と黒髪の男の子が遊園地に向かって、距離を空けながら歩いていた。
「いつまで着いてくるんだよ、兄貴……」
「…………」
黒髪の男の子は、無言で少し後ろを歩く黒髪の少年に話しかけるが、黒髪の少年は何も答えなかった。
すると黒髪の少年のポケットから、青い雛鳥がひょこっと顔を出して言った。
「アンタ一人だと心配だからッ、着いて来てあげたのよッ」
「ガキじゃないんだし、平気だよ」
「なにかと物騒な世の中なのよッ」
陽光町は治安の良い町ではあるが、黒髪の少年は弟を心配して着いてきたようだ。
「ところでなによッ、アンタの持ってるそれッ」
「これか? これは今日プレオープンの遊園地のパンフレットだぜ!」
黒髪の男の子が青い雛鳥に見せたのは、さっきのと同じパンフレットだ。
「あらッ、秘宝バトルのイベントもあるのねッ」
「そう! そうなんだよ!」
青い雛鳥のつぶやきに、男の子は勢いよく食いついた。
「今日のイベントには、秘宝大会三位のヴァルカンが来るんだ! 生でベストエイトの試合を見られるなんて、行くしかないだろ!」
それを聞いた青い雛鳥は、黒髪の少年の肩を掴んでゆさゆさと揺らした。
「黒城ッ、アタシもその大会出るわッ!」
「……興味ない」
「なんでよッ!?」
「……俺は非干渉主義だ。誰かと競うようなことはしない」
「またそれッ!? そうやってアンタは……」
青い雛鳥がピィピィと騒ぎ、黒髪の少年が無言で聞き流す、いつもの光景である。
そうこうしているうちに、目的地に到着した。
「あっ、いました! ゆうくーん!」
「おー! たくみー!」
遊園地の入口で、栗毛色の髪の男の子、たくみが手を振っていた。黒髪の男の子、ゆうきは手を振り返して駆け寄った。
「悪い、待たせちまったな」
「いえいえ、ぼくも今来たところですから」
たくみは姉の前以外では、基本的に敬語を使う。年下や同い年の相手に対しても。
「さっそく中に入ろうぜ!」
「そうですね!」
ゆうきとたくみはパンフレットに付いていたチケットを切り取り、受付のお姉さんに手渡した。
「ニ名様ですね、いってらっしゃい」
受付のお姉さんは笑顔で、二人を遊園地の中へと通した。
無事を見届けた黒髪の少年は、踵を返して自身が通う学校へと向かった。
役職説明:【市民】
なんの能力も持たないただの人。
逆に、なんの能力も持っていないからこそ、人狼に噛まれることを恐れず、自分の推論を述べることができる。
ただし、自分から市民であることを明かすことは悪手である。なぜなら特別な役職の潜伏枠を狭めることになるからだ。
基本的には役職者の盾となり、市民陣営の勝利のため、処刑されることもいとわない心構えが必要となる。
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