秘宝バトルのステージを見終わった二人の男の子、ゆうきとたくみは、遊園地内のアトラクションを満喫していた。
「たくみ、次はあのアトラクション乗ろうぜ!」
「待ってよ、ゆうくん。少し休憩しよ?」
「なんだよ、休憩なんてしてたら、アトラクション制覇できないぜ?」
ゆうきとたくみがどうするか話し合っていると、遊園地の片隅で泣いている女の子を見つけた。
ゆうきとたくみは互いに頷くと、声をかけに行った。
「あの、大丈夫ですか?」
「どうして泣いてるんだ?」
「ママに置いてかれちゃたの……」
女の子は泣きじゃくりながら、その場に膝をついた。たくみは励まそうと必死だった。
「きっと閉園の時間になる頃には迎えにきますよ!」
「おれの兄貴もそう言ってたぜ!」
「でもわたし、一人だもん。そんなに待てないよ……」
女の子が言うように、閉園までにはまだかなりの時間があった。
「じゃあ、おれたちが一緒に居てやるよ。それなら寂しくないだろ?」
「そうですね! 一緒にアトラクション巡りしませんか?」
「……うん」
女の子は、二人の男の子の手を握って笑った。
「わたしは、あかり。あなたたちの名前は?」
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「あかり、次はあれがいい!」
「えー、あんなのガキっぽくて嫌だぜ」
「ゆうくん、アトラクション制覇するんじゃなかったんですか?」
「うっ……。分かったよ……」
あかりはメリーゴーランドの列に並んだ。
「二人とも、早く早く」
「ゆうくん、行きましょう!」
「ああ、いま行くぜ!」
嬉しそうなあかりの姿に、ゆうきも嫌々さが消えていった。
メリーゴーランドの次にあかりが向かったのは、お化け屋敷のアトラクションだ。
「あかり、ちょっと怖いけど挑戦してみる!」
「お、お化けなんて子供騙しだぜ……」
「なんだかわくわくしますね!」
お化け屋敷に入る前から怯えているあかりとゆうきに対し、たくみは平然としていた。
「お部屋、真っ暗! 二人とも、はぐれないようにわたしと手を繋いで!」
「まったく、あかりは怖がりだな……」
「あはは、ゆうくん声が震えてますよ」
「ふっ、震えてねぇぜ! こんなん余裕だぜ」
ゆうきは度胸を見せようと、奥へと走って行った。
「あっ、ゆうくん!?」
「ゆぅくん、一人で行っちゃだめ!」
「うわぁぁぁぁっ」
ゆうきが走って行った先から、彼の悲鳴が聞こえた。
ゆうきは全速力で来た道を戻った。
「で、ででで、出たんだよ! 甲冑の騎士のお化けが!!」
「ええっ!? 本物のお化けがいたの……?」
「ゆうくん、きっとそれは置き物ですよ。目が赤く光ったりするのも、お化け屋敷ではよくある仕掛けですよ?」
「いやいやいや、いたんだよ! まっすぐ走ってたら、ぶつかったんだ!」
「あかり怖い……。手繋いでいこう?」
「あかりさん、分かりました。大丈夫ですよ、驚かせるための演出ですから」
「お、おれの話は本当だぜ!?」
子供たち三人は、順路をまっすぐ進んだが、甲冑の騎士はどこにも見当たらないまま、出口へとたどり着いた。
「二人とも、あれが出口じゃない?」
「甲冑の騎士なんて、いませんでしたね」
たくみはゆうきだけに聞こえるように、小声で続けた。
「ゆうくん、あかりさんを楽しませるように作り話してくれたんですね!ありがとうございます!」
「やっぱりあれは本物の幽霊だったんだ……」
「えっ……?」
ゆうきは青ざめた顔で、身を震わせていた。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「よっし、アトラクション全制覇だ!」
「やったね、ゆうくん!」
夕暮れ時、ウォーターコースターを乗り終えた子供たちは、歓喜していた。が……、
「うぅ……。ぐすん……」
「あかり、どうした?」
「どうしたんですか、あかりさん」
ゆうきとたくみが心配すると、あかりは「だって」と泣き始めた。
「あかり、また一人ぼっちになっちゃう……」
あかりは男の子たちとの別れを惜しんでいた。
「だからって、ずっと居るわけにはいかないだろ?」
「困りましたね……」
たくみはキョロキョロと辺りを見渡すと、「そうだ!」と何かを閃いたようだ。
たくみが見つけたのは、ダーツ屋と書かれた店だ。
「よう坊主、ダーツ三回で五百円だ。やってくかい?」
たくみは財布の中を確認した。百円玉が三枚と、あとは小銭だけだ。
「おれ、二百円なら持ってるぜ!」
ゆうきは百円玉を二枚、たくみに渡した。これで合わせて五百円だ。
「真ん中に当てたら百点、その付近に当てたら五十点だ。頑張んな」
たくみはダーツの矢を三本貰い、一本をゆうきに渡した。あかりは泣き止んで、二人の様子を見つめている。
「えいっ!」
たくみがダーツの矢を投げた。ダーツの矢は、五十点の円の中に突き刺さる。
「いいぞ、たくみ!」
「……たっくん、頑張って!」
ダーツの得点によって、貰える景品が選べるようだ。今の点数だと、駄菓子レベルだ。
「今度こそ、えい!」
たくみは二本目のダーツの矢を投げた。ダーツの矢は、再び五十点の円の中に刺さる。
この点数だと、小さなマスコットの景品が貰えるようだ。
「ゆうくん、後はお願いします!」
「ああ、おれに任せろ!」
たくみが立っていた位置に、ダーツの矢を持ったゆうきが立った。あかりも「頑張れ」と応援していた。
「いくぜ、当たれ、真ん中!」
二人が応援する中、ゆうきの投げたダーツの矢は、真ん中の百点の円に見事刺さった。
ダーツ屋のおじさんは、特等の白いうさぎのぬいぐるみを、ゆうきに渡した。
「おめでとう、これが二百点の景品だ!」
「ぬいぐるみ……? たくみ、これでよかったのか?」
「はい! さすがゆうくんです!」
たくみは白いうさぎのぬいぐるみを、ゆうきと一緒にあかりへ手渡した。
「あかりさん、ぼくたちからのプレゼントです!」
「おれたち、陽光公園によくいるから、また遊ぼうぜ!」
「ゆぅくん、たっくん、ありがとう!」
あかりは白いうさぎのぬいぐるみを受け取ると、満面の笑みを見せた。
役職説明:【殉職者】
自分が信じるもののため命を落としたい人間。
どの陣営が勝利したかは関係なく、自分が死亡すると追加で勝利となる。
ただし、突然死した場合は勝利にならない。
自分の正体が判明してしまうと、処刑先にも襲撃先にも選ばれにくくなるため、基本的にはできるだけ正体は隠しながらチャンスをうかがう。
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