「これはひょっとして地球外生命体か……?」
「っていうことは、オーナーご存知?」
タイヤンが不思議そうに呟き、ユエがアレクサンドラに尋ねる。
「だから知らないわよ! 地球の生命体じゃないの?」
「それらしい該当データは見当たりませんが……」
タイヤンがデータベースを確認しながら答える。
「それじゃあ、異世界とかじゃない?」
「改めて異世界コンビの見解は?」
ユエが美馬たちに尋ねる。
「いや、知らんな……」
「なんでもかんでもこっちに振るなや!」
美馬は静かに、ナーは大声を上げて否定する。
「パッローナ以外の異世界からの闖入者……って可能性もあるね」
石火に乗って、現場に到着した電の搭乗者、閃が割り込んでくる。
「そ、そんなことがありうるんかいな?」
石火を駆る隼子が驚く。
「もはや何が起こってもおかしくないご時勢だからね……」
「それにしてもやな……」
「それでどうする? オーナー」
美馬が冷静にアレクサンドラに尋ねる。
「まさに未知との遭遇ってやつね……セバスティアン、対話を試みて頂戴」
「かしこまりました……」
「……どうかしら?」
やや間を置いて、アレクサンドラが尋ねる。セバスティアンが首を振る。
「……駄目です、あらゆる手段を講じましたが、反応が見られません」
「そう……とは言っても、浮遊しているのをこのまま放置するわけにはいかないような気がするけど……⁉」
アメーバ状の生物が突如として、火球を放ち、市街地を燃やし始めた。ユエが叫ぶ。
「オーナー!」
「セバスティアン!」
「周辺住民の避難は既に完了しているとのことです」
「これよりあの浮遊体をQと呼称! Qは人類に敵意ありと判断! 速やかに排除を!」
アレクサンドラが迅速に指示を出す。美馬がテネブライをQの群れに向けて躊躇なく突っ込ませ、サーベルを振るう。
「はっ!」
Qは両断される。
「私たちも続くわよ!」
「了解!」
ユエとタイヤンは機体を飛行形態にしたまま、ミサイルを発射する。それを喰らったQはあっけなく四散する。ユエが皆に通信を繋ぐ。
「耐久力は大したことはなさそうよ!」
「よっしゃ! オーセン!」
「うん、数が多いから、派手に行こう!」
隼子と閃もそれぞれ、石火と電の火器をフル稼働させる。砲撃を喰らったQたちは次々と爆散していく。隼子が手ごたえを感じる。
「ええ調子やないか!」
「……いや、ちょっと待って!」
「なんやオーセン? あ、あれは⁉」
モニターを確認した隼子が驚く。地面に落下したQのかけらが姿を変えて、二足歩行のロボットのような形になり、各々歩き始めたのである。閃が戸惑い気味に呟く。
「死んでいない、分裂して増えた……しかもこちらをコピーした……?」
「市街地中心に進んでいっている! なんとか防いで!」
「そうは言っても! 分裂する相手にどうしろと!」
アレクサンドラの指示にユエが反論する。アレクサンドラが軽く頭を抱える。
「くっ……」
「お嬢様!」
「なに⁉ はっ⁉」
セバスティアンがモニターに表示した画面を見てアレクサンドラは驚く。分裂して、ロボットのようになったQの大きな個体が一体、市街地からやや離れた工場に接近している様子が映っていたからである。
「あれは化学工場のようです! 火薬などに引火し、爆発する恐れがあります!」
「だ、誰か阻止して!」
「美馬くん!」
「ちぃっ、間に合うか⁉」
閃の声に応じ、美馬はテネブライを向かわせるが、それよりも早く、Qが工場に向かって、振り上げた右手を振り下ろそうとする。隼子が叫ぶ。
「ア、アカン!」
「チェストー‼」
「⁉」
次の瞬間、大きなQの個体が真っ二つに切り裂かれ、消滅した。そこには刀を真っ直ぐに振り下ろした赤紫の機体が立っていた。アレクサンドラが呆然と呟く。
「ど、どなた……?」
「あの機体は鬼・極……ってことは『ツインテールの鬼神』、高島津幸村ちゃんやん!」
「ちゃ、ちゃんって! ……久しぶりと初めましての面々が顔を揃えているでごわすな!」
小柄な体格で黒髪ツインテールの美少女が周辺の各機のモニターに映る。
「高島津……もしかして伊織が言っていたのは……」
「貴殿が二辺工業の新オーナー、アレクサンドラ氏じゃな! 姉上から仔細は聞いております! 助太刀に参りました!」
「心強いわ! 各機反撃よ!」
「水を差すようで恐縮ですが! Qの消滅方法が分かりません!」
「そ、それがあったわね……」
ユエの言葉にアレクサンドラが再び頭を抱える。閃が幸村に尋ねる。
「幸村ちゃん、今どうやって相手を消滅させたの?」
「バッっとして、ガッって感じじゃ!」
「う~ん、感覚派な答え!」
「……コアや」
しばらく黙っていたナーが呟く。美馬が問う。
「コア?」
「せや! あの透明な体をよ~く見てみい! 中心部分に小さい黒い球があるやろ! あれがおそらく奴らの体を司るコアみたいなもんや!」
「ふん!」
美馬が近くのQのコアを狙って斬撃を加えると、Qは消滅した。タイヤンとユエが呟く。
「これは驚いた……的確な分析だな」
「ただの賑やかしマッチョ要員じゃなかったのね……」
「なんやねん、賑やかしマッチョ要員って!」
「とにかく対処方法が分かったわ! 今度こそ反撃開始よ!」
アレクサンドラが号令する。
「うおおおっ! 地上の敵はオレたちに任せな!」
玲央奈が獣如王を勢いよく突っ込ませ、トリオ・デ・イナウディトとともに地上を歩くQたちをことごとく消滅させていく。太郎が画面の片隅に映ったものに気付く。
「ん? れ、玲央奈さん、あれを⁉」
「あん? あ、あれは⁉」
獣如王のモニターに崩れた建物のがれきを懸命にどかそうとする男性の姿が映る。
「誰かを助けようとしているのか? ……はっ!」
あらたに近くのビルが崩れ、その破片が男性の真上に落下する。玲央奈が手を伸ばす。
「くそ! 間に合わねえ! ⁉」
その時、男性を眩い光が包み込んだ。
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