「ところで相手のロボットはなんなんだ⁉」
「皆目見当もつかん!」
「そ、そうか……」
外原のはっきりとした物言いに大洋は黙った。
「瀬戸内海には大小合わせて約八百の島々がある! 仕掛けどころとしては悪くない!」
茶色のカラーリングをした機体が島の岩陰などを巧みに利用し、射撃してくる。
「くっ、正確な射撃だ。やるな……む!」
大洋がモニターを確認すると、茶色の機体が数機、海上を滑走するように動き、桜島に攻撃を加えている。桜島も反撃するが、うまく距離を取って、再び接近して攻撃、というヒット&アウェイ戦法を用いている。外原が叫ぶ。
「艦の方が狙われちょるか!」
「やつら、海の上を滑っているぞ!」
「よく見てみい! 足元に特殊なホバースケートをつけているんじゃ! あれで海上でも地上とほぼ同様に動き回ることが出来る!」
「くっ、迎撃しないと……」
「あの艦には飛行機能を持った機体がこの『彼方』しかないようなもんじゃからな、海上戦ということもあるし、そもそも単純な機動力で劣っているんじゃ!」
「ちょっと待った! 機動力ならば遅れは取らんばい!」
「増子さん⁉」
海上に向かって卓越が降り立ってくる。外原が叫ぶ。
「卓越の機動力は確かに高い! だが、それは平地での話じゃ!」
「まあ、見ちょきなさい!」
卓越は四つん這いの姿勢を取り、両腕と両脚をそれぞれ重ねると、合わさった腕と脚が車輪へと変形した。増子が笑いながら叫ぶ。
「はははっ! こいが卓越のもう一つの形、『二輪車モード』たい!」
「いや、だから増子さん、何で回線をオープンにしちゃうんですか!」
「男は細かいことは気にしたらいかん、曽我部くん!」
外原は驚く、
「二、二輪車モードだと⁉」
「これを見るとね!」
「いや、映像回線まで繋いじゃったよ⁉」
大洋たちのモニターに自転車の様になったシートに座る増子たちの姿が映し出された。
「そ、それは……⁉」
「このモードになることによって、卓越のスピードは更に一段階上がる。『極東の快速列車』と呼ばれる超スピード、その目に焼き付けるたい!」
そう言って、増子たちは物凄いスピードでペダルを漕ぎ始めた。その結果に大洋が驚く。
「なっ! う、海の上を走っている⁉」
「ふはははっ! どうたい、大洋くん!」
「凄いですよ、増子さん!」
「ただ、これには問題があってな……」
「問題?」
「べダルを漕ぐことに集中せんといかんから、その他の行動がとれん!」
「ええっ⁉ こ、心なしか、徐々に海に沈んでいっているような……」
「増子さん、マズいっすよ! とりあえず近くの陸地に上がりましょう!」
曽我部の提案で、卓越はその場から離れる。大洋が困惑気味に呟く。
「な、なんだったんだ……」
「しかし、相手も戸惑い気味ぜよ! 反撃するなら今じゃ!」
「それはアタシらに任せてもらおうか」
「梅原さん! ですが、ダークホースなどにも飛行機能がないのでは⁉」
「その為に私たちがいます!」
「その声は⁉」
「カントリオ娘、いっきま~す!」
三機の飛行機が桜島のカタパルトから飛び出す。カラーリングは蜜柑色で、そのフォルムは丸みを帯びている。
「ひょっとして、乗っているのはミカンたちか⁉」
「はい、順に柑橘壱号、柑橘弐号、柑橘参号と言います!
モニターに映ったミカンが元気よく答える。蜜柑色のパイロットスーツに着替えている。
「せ、戦闘にも参加するとは……」
「ライセンスは所持しています! ご心配なく!」
「そうは言ってもだな……」
「皆さん、お願いします!」
三機の柑橘の上に三機の機体がそれぞれ飛び乗った。そして、三機は敵機に接近する。初めは面食らった敵機たちだったが、すぐさま射撃の狙いを桜島からそちらに切り替える。
「ふん!」
緑色の機体、サガンティスが銃弾を跳ね返し、そのまま、敵機に突っ込み、強烈なパンチを繰り出し、敵機を半壊させる。
「流石はサガンティス! 高い防御力と一撃の破壊力です!」
サガンティスを上に乗せているイヨカンが称賛する。
「せい!」
青色の機体、リベンジオブコジローが長い刀を振り回し、離れていた敵機の頭部を刎ねる。
「出た! 『秘剣・燕倍返し』! 見事な太刀筋です!」
リベンジオブコジローを乗せているポンカンが褒め称える。
「喰らえ!」
上半身が人型で下半身が馬型の黒いロボット、ダークホースがその両方の後ろ脚から鋭い蹴りを放ち、敵機の頭部と右肩部を吹き飛ばす。
「素晴らしい蹴りです!」
ミカンが拍手を送る。多田野が答える。
「当然です! なんてたって、キックさんの蹴りですよ!」
「菊じゃ! お前、後で尻ば蹴り飛ばす……」
「はっ、教育的指導ですね! ありがとうございます!」
「な、何故、お礼を……?」
梅原と多田野のやりとりにミカンは引き気味になりながら首を傾げる。
「桜島に群がる敵機は退けた! 反撃ぜよ!」
「おおっ! って⁉ ど、どうした⁉」
彼方が急に機体のバランスを崩した為、大洋は戸惑った。外原は言いづらそうに口を開く。
「……先の懲戒任務から間を空けずに出撃したので、エネルギー切れが近いぜよ……」
「なんだって! うおっ!」
大洋の乗る光が、射撃を喰らう。
「だ、大丈夫か!」
「ちぃ! 駆動系に異常発生! 本当に正確な射撃だな!」
大洋が忌々し気に吐き捨てる。
「お二人とも待っていて下さい! イヨカン! ポンカン!」
「ミカン⁉」
ミカンたちはダークホースたちを近くの陸場に下ろすと、すぐさま大洋たちに接近する。
「イヨカン!」
「了解!」
イヨカンの操縦する柑橘弐号の機体中央部分から数本のマニュピレーターが出てきて、光の故障箇所を急ピッチで修理し始める。大洋が驚く。
「修理機能付きなのか⁉」
「あくまでも応急処置のようなものですが……これで動くはずです!」
「おおっ! 動くぞ! だが、彼方のエネルギーの方が……」
「それはこちらに任せて下さい!」
ポンカンが自身の乗る柑橘参号を彼方に限りなく近付け、手際よく彼方の機体側部にある供給口にホースを繋ぐ。大洋が再び驚く。
「こっちは補給機能付きか⁉」
「補給艦に比べれば、もの足りませんが……充填しました!」
「おおっ、充填されたぜよ!」
「ありがとう! 助かった!」
「まだです!」
ミカンが叫ぶ。大洋が戸惑う。
「な、なんだ……?」
「……敵機データ分析完了……海賊集団『真倭寇』の用いる機体、『水猿』の機体群と確認! いずれも主な武装はライフルとブレードのみ! 光のスペックならば、落ち着いて戦えば後れを取ることはありません!」
「ミカンの乗機は分析機能付きか!」
「直接の戦闘では援護射撃しか出来ませんが、こういう形で役立てます! せーの……」
ミカンたちが大洋とモニターを繋ぎ、声を揃えて叫ぶ。
「「「ご武運を!」」」
「うおおおっ! 燃えてきたぞ!」
「⁉ な、なんで服を脱ぐんですか⁉」
フンドシ一丁になった大洋が見て、ミカンたちが戸惑う。
「理由などない!」
「せめてあって下さい!」
「行くぞ! 外原!」
「おおっ!」
外原は彼方を巧みに操縦し、敵機との間合いをあっという間に詰め、大洋が光に刀を振るわせる。次々と敵機を破壊し、戦場に残っていた敵機はいなくなった。
「見たか!」
「わ、分かったから服を着て下さい! ……! まだ敵がいます!」
「何⁉ どわっ⁉」
海中から巨大なサメのような艦が出現し、先端部分を口のように開いて、光を挟み込む。ミカンが間髪入れず叫ぶ。
「真倭寇の用いる艦艇の一種、『忍鮫』です! そのままでは噛み砕かれてしまいます!」
「くっ! は、外れん!」
「アミューズパフォーマンス!」
「⁉」
ターコイズブルーのような色合いで獅子の顔をした人型ロボットが海中から飛び出し、忍鮫に対して、鋭いパンチを喰らわせる。光は忍鮫から逃れることが出来た。
「ようやく着いたさ! ここがロボチャン会場だな⁉」
「どう見たって違いますよ!」
獅子のロボットから若い男女の声が響く。
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