アンタとはもう戦闘ってられんわ!

阿弥陀乃トンマージ
阿弥陀乃トンマージ

第17話(1)ラウンジで待機

公開日時: 2021年12月8日(水) 18:17
更新日時: 2021年12月8日(水) 20:43
文字数:2,483

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「さて、間もなく関門海峡に差し掛かるわけだけど……セバスティアン!」

「はっ……」

「異常はないかしら?」

「今のところは安全な航行が出来ております」

 セバスティアンはビバ!オレンジ号の操舵をしながら冷静に答える。

「それは結構……」

「ですが、仕掛けてくるとするのならばこの辺りです。気は抜けません」

「それもそうね……」

 アレクサンドラは席を立つ。

「どちらへ?」

「お花を摘むついでに頼れるパイロットたちに注意喚起してくるわ」

「皆さんには今の時間、ラウンジに集まってもらっています」

 アレクサンドラはパイロットたちが待機しているラウンジに向かい、入室する。

「休憩中のところ悪いのだけど……⁉」

「ふん!」

「うおおおっ!」

「よっしゃ、いけ、ベアトリ! 奇異兵隊の意地を見せろ!」

「負けたら夕飯抜きだぞ、トリクシー!」

「女のプライド見せてやりなさい! 波江曹長!」

「良い感じで筋肉が躍動しているぞ! 疾風!」

「負けるな、大洋! アンタの勝ちにタイヤンの夕飯賭けてるんだから!」

「俺の⁉」

 部屋の中央でベアトリクスと大洋が腕相撲をしている。互いの実力は思いの外伯仲しており、見守っているギャラリーも白熱している。ベアトリクスを応援しているのが、玲央奈とウルリケと梅上で、大洋を応援しているのが竹中とユエとタイヤンの様だ。アレクサンドラは苦笑しつつ呟く。

「力が有り余っているのは結構なんだけどね……」

「お疲れさまです!」

「オーナー、お疲れさまです!」

「お、お疲れさまです!」

 アレクサンドラの入室に気付いた松下と隼子がすぐさま立ち上がって敬礼し、側に座っていた太郎も慌ててそれに倣う。アレクサンドラはまた苦笑する。

「別に正規の軍隊じゃないのだから、そんな堅苦しい挨拶は要らないわ」

「はっ! 了解しました!」

「了解しました!」

「りょ、了解しました!」

「貴方たちはあの馬鹿騒ぎに付き合わないの?」

 アレクサンドラは立ち上がった三人とその近くに座っていた閃に声をかける。

「自分はいつでも出られるように静かに待機しております! 同僚とのコミュニケーションも重要ですが、それは竹中と梅上に任せております! 役割分担です!」

「流石は歴戦のパイロット、頼もしいわね……あ、座っていいわよ」

「失礼します!」

 三人は席につく。

「で、オーセンは何をしていたの?」

「技術者としての興味から太郎ちゃん……赤目少尉にあの獣如王という機体について色々と質問を……全部はぐらかされちゃっているけど」

「い、一応軍事機密なので、そうベラベラと教えられませんよ! と、というか、僕らも余り細かいことは知らないというか……」

「知らへんのかい」

 太郎の言葉に隼子が軽く突っ込みを入れる。

「そ、そういうお二人だって、電光石火について全然教えてくれないじゃないですか!」

「だって乗っている私らもよく分からないし!」

「オーセンが分からないんやからお手上げや!」

「わ、分からないんですか……」

 何故か偉そうに答える閃たちに太郎は困惑する。

「あ、オーセンは、名字の桜花の“おー”と、閃の音読み“せん”を合わせたんやで」

「そ、それはなんとなく分かります……わりとどうでもいいです」

「どうでもいいってひどいなあ~」

 閃が唇をぷいっと尖らせる。隼子が話題を変える。

「オーナー、なんで艦体をオレンジ色に? というか、ビバ!オレンジなんてけったいなネーミングはそもそもなんですか?」

「けったいって……艦長のマックスいるでしょう?」

「ああ、マクシミリアン斉藤さん」

「彼のルーツがオランダだっていうから。オランダの人にとってオレンジって特別な色っていうらしいし、なんとなくノリで名付けたわ」

「そ、そんなノリで……」

「あの立派な髭の男性が艦長だったのか……」

 隼子と太郎はそれぞれ別の意味で絶句した。閃が思い出したように口を開く。

「そういや、松下さんたち、髪が生えるの早いですね」

「……嫌なことを思い出させるな。これはウィッグだ」

 松下は髪を取って、坊主頭をあらわにする。太郎が驚く。

「ええっ⁉」

「たったひと月かそこらでここまで生えるわけがないだろう」

「な~んだ、てっきり博多アウローラが強力な育毛剤を開発したのかと思った」

「それならウチの会社は業種転換した方が良いな」

 松下は苦笑しながら髪を被る。太郎が唖然とする。

「な、こ、これは……?」

「先月桜島の方で色々あってな……」

「桜島? ああ、国復活騒動の……」

「そう……古代、九州を中心に西日本に広い領土を持っていたとされる大国、奴邪国……その復活を目論む者に操られて、松下さんたち色々大変だったんだよ~何故か三人揃いも揃ってスキンヘッドにさせられてさ」

「調査書には一応目を通しましたが、まさかそんなことがあったとは……」

「ああいう調査報告の類は色々と大事な事を伏せてあったりするからね。そのまま鵜呑みにするのは危険だよ~」

「肝に銘じておきます……」

「それよりも何か大事なことがあったのでは?」

 松下がアレクサンドラに尋ねる。

「そうそう、間もなくこの艦は関門海峡にさしかかるわ。敵対勢力が仕掛けてくるならばこの辺りじゃないかってセバスティアンが言うから、その注意喚起にね」

「敵対勢力?」

 太郎が首を傾げる。

「タエン帝国……この太陽系近隣の星系をほぼその支配下に置いている強大な帝国よ」

「ええっ⁉ タエン帝国と地球圏連合政府との間では先日、月面において、暫定的とはいえ平和条約が締結されたはずでは⁉」

「このお嬢さん……オーナーが狙いらしいよ」

 閃がドリンクを飲みながら太郎の疑問に答える。

「ね、狙いって……な、何者なんですか、アレクサンドラさんは?」

「太郎ちゃん、女の秘密は詮索しないものってママから教わらなかった?」

「こ、この場合は知る権利があると思います! 僕、自分も一部隊を預かる身なので!」

「ふむ、一理あるわね……まあ、折を見て話すわ」

「今、話してもらいたいところやけどな……!」

 隼子がぼやいたところでラウンジに警報が鳴る。セバスティアンから通信が入る。

「敵襲でございます!」

「全員、出動よ!」

 アレクサンドラの号令で全員がラウンジから飛び出す。

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