フェートン。
ここ最近スラム街で大きく張り出されている俺の名前。
張り紙の内容はこう。
『黒髪の英雄、フェートン
きっと彼は我らの神になるだろう。』
いや、ならんわ。阿呆か。
俺は色んな所を旅している、それにはまぁ理由があるんだがそんなものはどうでもいい。
今回行くのは中央の國ケントリクスはウェイストグラ。
最近、風の噂で【異能を持つ双子】の話を聞いて偵察に来た。
え、俺の職業が何かって?そんなものは無い。ただの旅人だよ。
ガタゴトと揺れる馬車に乗って目的地へと向かう。
そんな中、1人の老人に出会った。
「お前さん、旅のお方かね?」
「俺ですか?そうですよ。」
「異能持ちじゃな。何故こんな所にいる。何処かで悪さをしようってんじゃねぇだろうな?」
「まさかぁ、俺、面倒ごとは嫌いなんです。」
「ふん。信用ならねぇな。」
「なんなら自己紹介しましょうか?」
「聞いてやろうじゃねぇか。」
名前、年齢、誕生日、東の国生まれである事、異能は【rapture】である事、理由があって旅をしていること、スリーサイズを言おうとしたら断られた。
「なるほどな。それで、理由ってのはなんなんだ?」
「それは秘密です」
「気持ちの悪ぃ笑顔だな。」
「辛辣ですね。」
その後は何かと話が盛り上がって時間が経つのが早く感じた。
「それでは、俺はここまでですので。」
「あぁ、お前さん、慣れた喋り方の方がいいと思うぞ。」
「…なんの事ですかね?」
「むだや。お前の喋りはこっちやろ。」
「…なんや、バレとったか!ありがとな!おっちゃん!」
「あぁ。」
しゃがれた声で言う老人に礼を言って馬車から下りる。
それと同時に風が吹き上げ、青葉が揺らいだ。
揺らいだ草むらの中に気配を感じる。
1、2…3、5人か。
知らないフリをしてすすめば、その気配は止まることなく着いてきた。俺が標的だと確信し、後ろを振り返り叫ぶ。
「貴殿らは何が目的だ!俺の何を求める!」
そうすると一人の女の子が草むらから顔を出し、両手をあげる。
金糸のような美しい髪に、猫の耳としっぽをつけて、包帯を拙く巻いた片脚を引きずらせながら出てくる。
「なんだ、怪我をしているのか?」
「まぁそうだな、」
「全員出て来い。」
「おい!皆!出て来い!」
そう声をかけるとほかの4人も目視できるように出てきた。
「なんだよ、いい取引でもできたか?」
「………………。」
「どうしたんだよルーン。」
「何、怖い人?」
出てきた奴らは皆、血の滲んだ包帯が巻いてあり、顔に大きな傷が残っている者や、中には四肢が欠損している者もいた。
「お前らは異能持ちか?」
「俺とコイツとコイツだけだ。」
そう言って片腕をなくしたおっさんが、自分と猫の少女と一向に口を聞かない少年を指さす。
「そうか。」
パチリと少女と目が合う。
「終わりだ。」
そのつぶやきと共に意識は深い闇へと堕ちて行った。
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