夢物語研究室

優妃
優妃

第一章【ストラト】

公開日時: 2020年12月11日(金) 12:18
文字数:891


中央の國は俺たちにとって、窮屈な檻でしかなかった。


毎日毎日双子の俺らを崇め、敬うような目の奥に、汚い欲望が透けて見えるようなヤツらがうようよと寄ってくる。


気持ち悪い。嫌いだ。


そう感じる俺にとってステラだけが味方だった。


俺と同じ顔なのに、中身が全く違う。


興味がそそられる。


小さな頃から髪は絹のようだと、目は海のようだと、少し筋肉の着いた腕は、白く晴天の雲の様だと。


そう言われ続けてきた。


隣で静かな顔でそれを聞いて、2人になったら顔を歪めて嘲るのは、とても気持ちが良かった。何だか俺達だけの世界で、他の人はただのジオラマなんじゃないかと、ただのものなのではないかと錯覚するほどに、一種の壁のような物を俺たちの周りに作って隔てていた。


「俺たちはずっと一緒だ。な!ステラ!」

「もちろんだよ、ストラト。」

「「何があっても、どんな時でも。」」


まだ俺たちが小学院にも通わないような歳の頃。


小さな小さな教会で、駆け落ちをした男女と、その友人の様な人が誓いの言葉を呟いているのを聴いた。


僕らが告げる約束も、誓いの言葉であると、小さいながらに考え、毎日言っていた。


「汝、ステラは、吾ストラトを片割れとし、良き時も悪き時も____」

「富める時も貧しき時も____」

「病める時も健やかなる時も____」

「共にあゆみ、他の者に依らず____」

「死がふたりを分つまで____」


なーんて。ずっとずっと、つらつらと。


俺たちの力は膨大な魔力、いや、魔力だけじゃない。精神力、体力、他にもいろんな目に見えない力を増幅させる。


それぞれに相性が合う力ならより研ぎ澄まされる。


初めてそれを知ったのは8…いや、9歳だったか?忘れたな…、けれどその辺だった。


同じ学園の友人達の前でそれが発覚してしまった。


ひとりは「すごい」と言った。

ひとりは「こわい」と言った。

最後の一人は嬉しそうに「ずっと友達でいてくれ」と言った。


俺はその時から気力の達人と同等であったから、ピリピリとした不愉快な気配にステラの手を握った。


それからはずっと2人きり。


関わるのは上っ面だけだった。


そんな俺たちの世界をあいつが変えた。


思い出話になっちまって悪ぃな。


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