妬む――。いやそうではない。ただ俺は――。
「ヨクもまぁ、そレで隣に並ビ。作リ笑顔をミセれるもんだ。反吐がデル――!」
一瞬の苛立ちが刀身に青白い雷を帯びさせ、踏み込む――。数センチまで迫った所で目を見開いた偽ライムは咄嗟に、両刀を交差させ俺の降り下ろす攻撃を防ぐ。お互い至近距離での睨み合う中、俺は口を開いた。
「さっきから……好き放題言いやがって。確かに……お前は素直だよ。逆撫でする言動さえ無ければ、無垢に思える程に」
「素直ニ……真っすグに! どんなニ傷つこうが! 言うベキだろウガ!!!」
押し合う刀からは火花が散り、俺の方が一歩踏み込むと偽ライムから舌打ちが聞こえる。
「違う! それこそ時に互いに深い傷を負うんだ!」
「負ってデモしねート分からネーだろ!!」
「それが相手の志を踏みにじる事になってもか!?」
「な、ニ?」
初めて弱弱しい声で返した偽ライムは、後ろに大きく下がると漆黒の両目を細める。刀を下ろし俺は眉を顰め、偽ライムを敵意とかの眼差しではなく、ただ見詰めた。
「お前、ライムにそう言えばよかったみたいな事言ったけどよ。確かに羨ましかったよ。でもな。だからってあいつの重荷になる事は口に出せないんだよ」
「ナンでだ――」
両刀を下げ、次は目を大きくする偽ライムに俺は微笑み掛ける。
「……友達だからだ。羨ましかったり、妬む事もあるかもしれない。でもよ。それって、そいつの事を尊敬している証でもあるんだ。……だから、ちゃんと見てるからこそ。言えない事もある」
「キレイごとだナ」
「お前もな。ただ自分の理想を押し付けて、正当化してるだけだ。全部間違ってるとは言わねー。お前みたいにぶつかってくる奴が好きな奴もいれば、鬱陶しく思う奴もいるんだ。お前がもし……好きになった友達が居たとして、そいつが鬱陶しく思う奴でもそう言えんのか?」
再び構える姿に俺も中腰で刀身を下段に構え、緊迫した空気が張り詰める空間で、俺の問いに偽ライムの染まる両目は少し曇って見えた。
「……。ケっ。ここに閉じ込めらレテル俺に、友達なんテ居ねー」
「よくもまぁ、それで俺を相棒とか言うのな」
「アン? ……癇に障ル野郎ダナ」
「それはお互い様って事で。というか俺は誰かさんのが移ったみたいだけど……。けど、ちょっと分かった気がする」
天叢雲剣の柄を強く握り直した音が響き渡る――。
「ハぁ?」
「真剣勝負で俺は――自分の気持ちに素直に戦う」
「それじゃァ、感情をコントロールって話ニナラネーぞ」
「お前と話してて色んな感情が湧いたよ。だから思った。戦いの中で感情をコントロールだなんて人生何回掛けてもブレるだろ」
呆れた表情を見せるが、構え、隙などには一切の油断を見せない。寧ろ俺を見てはいるが、波紋が起きれば、すぐにその場を度々一瞥する。
「……アン?」
「つまり、今をどうしたいか。……お前を見習って素直な気持ちで臨機応変やってみせるさ」
「言うのハ、簡単ダゼ? 相棒」
「あぁ、すぐに出来るとは思ってねー。でもここで負けるとも思ってねー」
一瞬の静寂と互いに笑みを浮かべる――。
「調子のイイ野郎だ。ジャァ……。続きト行こうカ!」
「おう。今を楽しませてもらうぜ!」
そして俺達の言葉が揃う――。
「「コンバートスキル・羅刹・無厭足!!!」」
次回 わちが……。
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