ギガフロッグの駆除クエストをが終わると、依頼主宅で夕飯をご馳走になり一泊して朝を迎えたら、おいしい朝食を頂いて(これが中々おいしくて量が多いこと)荷物をまとめて俺とカオルは昼前にハタラケヤに帰った。
キンチョウの2階にある畳で出来た私室でカオルと2人で居た。
「あの隕石みたいな宝石は明日、勘定するんですよね?」
「ああ明日だよ、依頼主のクエンさんは今日用事があるから、だから俺たちは今日は丸1日暇なんだよ」
依頼主もとい、クエンさんもあの宝石の発見者で勘定分の半分を分けようと約束したので、宝石を鑑定する時は共にすることにしている。
「う~~ん、だったら今日はどうしようかな~~、何しようかな~~」
タンクトップと短パンの姿で畳に横たわり、お尻をかきながら、わざとらしいあくびをする、まるで数少ない休日を無駄に時間を費やすおっさんのように、カオルは気を崩していた。
こいつ、ここに来てまだ2日なのに実家のようにくつろてんだ?なんか読書に集中できないな。
「どうしようも何も、お前まだ無職だから早く職業を着けてレベルを割り当てないと、せっかく手に入れたレベルがもったいないだろ」
「え、無職のレベルて他の職業にレベルを割り当てれたり出来るんですか?」
「出きるよ、てか無職はレベルを上げても強くのらないから、何かに就けないと身体が危ないんだよ」
ステータス職業の欄に何も載っていない、いわゆる無職でもレベルを上がるが、溜まった数値を上げる事が不可能なため、肉体的能力はずっと10才児と同じレベル5のままだ。
ステータス職業のレベルと数値は肉体に反映される。例えばある狩人が俊敏とスピードを高く上げれば、その狩人は忍者のように木から木へ、建物から建物へと速く飛び移ることができ、防御力を極めた武道家はゴーレムのような強靭さで鉄を砕けるのだ。
それは流石にオーバースキルじゃないか?と思うだろうが、むしろそうでもしないとこの世界では一般人でも生きづらいのだ。
先日のあのギガフロッグは例外な大きさだっだが、あれよりも大きくて危険な生物は腐るほど存在する。
その生物から身を護れる術が、ステータス職業なのだ。
そのため職業が就けれる14歳になると、みんな身の安全のためにステータス職業を選択するのだ。
「異世界は無職のままはダメなんだあ、じゃあ何になればいいの私は?」
「そういうのはな、自分と対話して選べ」
カオルは「え~~~~っ\(゜Д゜)/」と声を上げ、大の字へと姿勢を変えて半分白目で口を大きく開ける。やめなさいよ恥ずかしい!
「ステータス職業て言っても種類が多いし、それになったとしても今度はウルトも選ばなくちゃいけないから、キリヤさんが適当に選んでよーー!」
「やだ」
「どうしてそんな事言うんですか!ひどいですよ~~~~」
俺が拒否すると、カオルはそのまま転がりながらこっちに寄り、顔をうずくまるように両腕を俺の腹に強く抱き絡み、力の抜けた声でその理由を問いだす。
「どうしてですか~~~~?」
今度は顔を服に当てながら喋って来やがった!
「ただのポリシーだよ、あのな、自分が選ぶべき選択肢を他人に任したり指図されたりするのはな、自分が選んで後悔するよりも酷いもんなんだぞ、だから俺はお前の職業選択には口出しはしないからな」
理由をハッキリと述べた俺の顔を、カオルは上目遣いでただジッと俺の顔を見つめる。
「何かそういうので嫌な事でもあったんですか?」
「・・・・・・いや、別に」
俺は少し怪訝な表情で返してしまった。俺の表情を窺がったのか、カオルは視線を逸らし手に持っていた本に話題を変えた。
「それって何の本ですか?」
「これ?これはルドラー・ブリングの“世界は円く進むのか”て本だよ」
「なんか、頭が良さそうな本みたい」(; ・`д・´)
何お前、人生最大の試練の壁に衝突したような顔で反応してんだよ!逆にこっちが反応しづらいわ!
「この本の作者は、ステータス機能を開発した人で、その人が執筆した著書の内の1冊なんだ」
「そんなスゴイ人なんですね、ヒドラーさんは!?」
ルドラーな、ヒドラーじゃなくてルドラーだから。
興味を持ったカオルにこの本の内容の説明をした。
「この本は、世界はどう繋がり、関係しているのかていうーーーーーー」
「地球が丸いのは当然じゃないですか、何バカなこと言ってるんですか?」
「そういう意味の世界じゃない!話を最後まで聞け!」
カオルが真顔でアホな台詞をだしたから、つい反射的にツコッミを入れてしまった。
「この本に書いてる世界はそういう意味じゃなくて、輪廻についての世界なんだ、この人が若い頃に小遣い稼ぎで出版した奴で、親や親戚の言う通りに道を進んだ主人公が独り登山したら遭難して、そこで自然の命の因果関係、そこで親のいない人と出会って過ごす内容なんだ」
「で?」
「でって何だよ?」
「その話、最後はどうなるんですか?」
こいつ、話をまともに読まずオチを聞こうとしてるのか?
「話をすっ飛んでオチだけを教えてられっか、自分で最初から最後まで読めよ」
オチを教えず本をカオルの額に何回か軽く叩く。「イタタイ」と口を滑るカオルに本を頭の上に置いてそのまま渡す。
「ありがとうございます」ポツリと、こぼすように呟くカオル。
カオルは渡された本を手に取り、ただ表紙をジッと見つめていた。
見つめ終わったら、スッと立ち上がり部屋から出て行こうとする。
「おい、どこに出かけるんだ?」
「役場、なりたい職業が決まったので」
「場所、分るか」
「あっ・・・・・・」
「じゃあ、いっしょに行こっか」
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