クエストで金を稼ぐために俺とカオルは役場に着いて掲示板に貼ってある依頼の紙を眺めていた。
「クエストって結構あるんですね」
「クエストて言っても以来の内容はそれぞれなんだ、スライムやゴブリン等の討伐から害獣の駆除に農地や施設の警備とか種類や幅がとにかく大きいんだ」
クエストはその依頼の内容によって受ける側も変わってくる。学生が日稼ぎしたいときは個人の荷物運びや配達、結成したばかりのパーティーや若手の連中は運送の護衛や害獣駆除、経験者のパーティーは討伐クエスト、と自然と自分の状況やいっしょに遂行する人数によって選ぶクエストは決まるのだ。
「キリヤさん私たちはどのクエストを受けたらいいんですか?」
カオルはアヒル口で眉をひそめて俺に尋ねてきた。
「どのってそりゃあお前レベルとか低いからまずは誰でも出来る奴をーーーーーー」
「これやりましょう!ギガフロッグの群れの討伐!クエスト報酬と狩った数で報奨金が貰えるって!一攫千金しましょうよ!!」
カオルはギガフロッグ討伐依頼の紙を指さし、新しいおもちゃを見つけた子どものように目を輝せながらピョンピョン、と子ウサギのように飛びながら俺に推して来た。
「ああ!!、このクエストはお前には無理だ!諦めて他のクエストを受けるぞ」
「ええ何でですか?やりましょうよ!やりたいです私!!」
「ダメだ!こんな危険な奴より他に楽に稼げるクエストにした方が良いだろ?」
俺はカオルの希望を一蹴しとある1枚の依頼に指さした。
「ほらこれなんてどうだ?氷の運送の警備、警備つっても襲撃を受けるなんてめったにないし2日は掛かるが安全である程度は稼げるぞ!」
「やりましょう!討伐を!!」
「だからダメだって言ってんだろ!何回言ったら解るんだ?」
「どうしてですか!?こんなのやらなければ分からないじゃないですか!!」
カオルはやりたいというだけ漠然と言い続けて俺に説得しようとした。自分の今の実力など考えずに。
こいつまさか転生病に罹っちまったのか!?
転生病とは転生したばかりの日本人に多く見受けられる症状であり、自分は同じ主人公という特別な立場の人間だと思い込み実力を過信してしまって身の末に会わない行動電動をするのである。
例えば転生して2週間しか経ってステータス職業のレベルが40にも行ってないのに「俺は最強だ!」と単身ゴブリンを討伐しようとしたり、王族貴族に礼儀作法などせずそれどころか超俺様態度で接して来たり(その態度をとった日本人はこれといった特技はない)、と支離滅裂な事を平気で行うから厄介だ。
カオルの症状は見るからに軽めで過信というより、どちらかというと好奇心に近いから今から正せば重症化はならずに済むだろう。
「カオル、身の危険を及ぼす事をして指とか腕とかが無くなったらどうする?そうなったら店を開いて料理するだけじゃなくて私生活にも影響出るだろ?だから身の安全を考慮する必要がーーー」
俺が説明しているとカオルは涙目になって無言でこちらを上目遣いで睨んできた。
こりゃあ説得しても受け止めてくれねえな、ショウヘイはこんな事がなかったから順序通りにに進んでたが、これはしっかりと現実を見せてあげないといけないな。
「わーーったよ、そこまでしたいならこの討伐依頼を受けようか」
「やったーー!」( ≧∀≦)ノイエイ!
俺が討伐クエストの希望の了解をするとカオルは子どものようにまたピョンピョンとはしゃいで喜んだ。
こいつ料理するときのonとofの差が激しいな!多重人格とかあれ系の持ち主じゃないのか?
そうと決まれば誰よりも先にこのクエストを受けなければ、俺はギガフロッグの群れの討伐クエストのビラを取ると直行で受付に行き、受付嬢のカトレアさんに渡して受注した。
受付嬢のカトレアが俺とカオルを目を細めて交互に見るなや。
「ちょっとキリヤ君、この子って今朝の?」
「そうですよ今朝泣きじゃくってた子ですよ、さっき転生したばかりだから付きっきりで面倒を見ているんです」
「そうなのね、それで他のメンバーの子たちとはどうしたの?」
「ちょっと野暮用で抜けて今はカオルと2人で活動してるんだ」
「抜けるって何をーーあ~~はいはい」
説明もしてないのに何勝手に自己解釈して納得してるんだよ!てかさっさと受理してくんねえかな、後ろに列が出来はじめてるしこれ以上時間を喰ったら。
「おい何チンタラ話してんだよさっさと受付済ませろよな」
ほら後ろの人怒っちゃったじゃないか!
「ちょっと待ってよ今この人と話をしていますから!」
いやそんなのはいいから、さっさと受理して仕事してくれよカトレアさん!アンタこの前それで評判落としてへこんだじゃないか!
「そんなんだから受付しても男できねーーんだろオバサン!」
「ナンだとこの若造!もう一辺言ってみろやボケて!!その腐った口をねじ曲げてやるぞオラァ!!!!」
後ろの人がカトレアさんの触れて欲しくないところをほじくって大声で煽る。それを言われたカトレアさんは鬼神の顔つきになり、その人よりも大きく、役場の外でもハッキリと聞こえる程の怒声で言い返して受付の台を飛び越えて殴り掛かって来た!
殴られた人も負けじというか死を感じて応戦し、現場は戦場と化した。
カオルはこれを見て困惑したが俺はさっさと事を進みたいので別の受付嬢のソフィーにクエストの受理を頼んだ。
ギガフロッグの群れの駆除クエストを受理した俺たちは、ハタラケヤから数キロ離れた酪農地まで徒歩で行き、依頼主の地主と対面して依頼内容をチェックした。
クエスト内容はこうだ。
この時期になると定期的に発生するギガフロッグの群れを討伐すること。
発生するギガフロッグの数は例年通りだと約100匹以上でありその内の30匹を駆除出来たらクエストは完了とする。
30匹以上駆除した場合はその数に合わせて報奨金を付与する(最初の30匹はこれに含まれない)。
クエスト期間はこの農地に来てから1週間までとし、その間は希望があれば寝床と食事の提供は行います。
報酬は30万ポルド、報奨金は1匹につき1万ポルドである。
内容は以上となっている。ギガフロッグの駆除の割にはかなりの待遇と好条件だな。
ビラに書いてある通りの内容で合っている、と依頼主が言ったとこで次に状況の説明を頼んだ。
「今は夏だがらちょうどギガフロッグがここに来るんだ、アイツらはだいだいあそこの森林の奥にあるオイコ池から来るんだ」
依頼主はそう言いながら西側にある森林に指差した。
「そこからギガフロッグが来るんですよね?でもそこ森林は茸人族が住んでるから狩ってくれるんじゃ」
「ああここの茸人族は基本ギガフロッグとは天敵状態だから余り狩ろうとはしないんだよ」
「だから木の上で生活しいてるんですね」
茸人族とは人間の五才児程度の大きさのキノコに手足と人間の子どもの顔がある種族だ。
その姿は五才児がキノコの着ぐるみを着ていると勘違いするぐらいの容姿で、言葉はタケタケとしか言わない(それでも意思の疎通はできる)が、これでも人間の大人の知能を持っており見た目に反して侮れないのだ。
その茸人族が狩らずに避けて生活をするというのは、相当厄介なんだな今回のギガフロッグは。
「あのう、あそこのヤギたちがまだ外にいて危ないですよ」
カオルが会話に割り込み、柵から離され、首輪に柵内けら続く長に紐がくくりつけたヤギが数頭立っていた。
依頼主はカオルにこのヤギたちについて説明をした。
「あのヤギは餌なんだよ」
「餌?」
「そうああやってしておかないとギガフロッグは昼間に出てこないからね、夜の時は危険だからなるべく昼のうちに駆除したいからこうしてるんだよ」
「なんだかかわいそう」
哀しげな表情を浮かび肩をすくめ、餌にされてるヤギたちに同情するカオル、俺は彼女の肩を叩く。
「いいか、こういうことをしないと、もっと大きな被害が出てこの農園が危うくなるんだ、日本でもこういう仕方がない出来事とかあっただろ?」
カオルただ何も言わずに顔を縦に振る。だが彼女はヤギに関してなにか気づいたのか、依頼主に1つだけ尋ねた。
「そういえばあのヤギの周りって罠とか貼ってありますか?」
罠か、そう言えばそうだな、ヤギがギガフロッグの餌になっているのだったら周りにそれを仕留める為の罠を置いてあっても問題はない、むしろそれが普通だろう。ヤギの周りには罠がどこに置いているのかここからでは視認が難しいので、恐らくトラばさみ系の罠を茂みに隠して置いているに違いない。
「罠はもう置いていないね、確か3年ぐらい前からかな、」
罠はもう置いていないと、は?
「ダメ元で置いていたんだけど効果はないし金がかさむから辞めたんだよ」
ダメ元ってどういうギガフロッグなんだよ!?俺の知ってるギガフロッグはあのヤギより少し小さいやつだぞ!どんなやつなんだよ!?
「メエエエ!!!!」
店長の話を聞いていたら突如、ヤギが悲鳴を上げた。顔をそちらに向けるとそこには1匹のギガフロッグがヤギに近づいていた。
デカ!!あのヤギの2倍近くはあるぞあのギガフロッグ!
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