パーティーから出て行く事になった俺は、日本人転生者のヒロインと一緒にハンバーガー屋を開業した

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ステータス職業

公開日時: 2020年10月3日(土) 21:00
文字数:3,838

「なあキリヤ、あの娘、カオルて言うんだよな?」


「そうだけど、それがどうしたの?」


 厨房で俺と店長が音を立てながら調理してる最中、店長はカオルについて俺に訊いてきた。


「さっき転生したって言ったけど、もう職業は付いているのか?」


「いやそれがまだ付いてなくてね、俺が初めて見かけた時は役場で1人ガキみてーーに泣き喚いてだぞ」


「てことは死んだ理由はーーーーーー」


「聞いてないよ、てか転生したばかりの日本人にそれを聞くのは御法度だぞ覚えてるのか?」


 転生した日本人は大抵の場合、多くは死んだ最期の記憶と感覚をしっかり残してこの世界にやってくる。それ故死んだ時のショックや親しい人たちに一生逢えない事で心に大きな傷が出来てる場合が多い、なのでここに来たばかりの日本人には心掛けなければいけない。


 特に街に日本人が多ければ多いほどそういう傾向が強くなってくる。


 店長は喋りながらも流暢に手を動かしてフライパンに入ってある麺をかき混ぜた。


「そうだったな、でもカオルはこの後どうするんだ?」


「アイツ、60万ポルドを持ってるから金銭には困らねえがそれ以外は赤子当然だから、この世界に慣れるまで俺が付きっきろうと思ってな」


 店長は笑みをこぼす。


「お前さん!あのパーティーから離れても面倒見の良さは離れないんだな」


「そうだからパーティーから離れたんだよ!」


「そういやそうだな、よし出来上がったからこれをそっちに持って行ってくれ」


 店長は焼きそばとハンバーグを作り終えると、それぞれ6枚の皿に別けて盛合せる。


「なあ、皿が6枚もあるんだが?」


「何言ってんだ!残りの4枚は俺たちの分に決まってるだろ!」


「そういうことか」


 どうやら俺たちもいっしょに飯を食うらしい。


 俺と店長は盛った皿をカオルが座っている席へ持ち運び、机に3つ別けて綺麗に配置した。


「ほら、もう出来上がったぞ、俺たち3人で食べようぜ!」


「お前は手伝っただけだろ!何自分が全部やりましたみたいな言い草してんだ!」


「何だよそれ?手伝いでも俺が作りましたみたいなことしてもいいだろ!」


「お前はそう言い張るのは2万年早いんだよ!」


「あのーー、もう食べましょうよ」


 俺たちの揉め合いを止めるように食べる事を薦めたカオルだが、顔はこっちに向いておらず唾を飲み込みながら食べ物を凝視していた。


「そうだな、カオルの言うとおりご飯にしよう、な店長」


「その通りだな、よし!そらじゃあ喰うか!」


 俺と店長は席に座り、カオルと3人で昼飯を食べ始めた。


 カオルは焼きそば、店長はハンバーグ、俺は焼きそばとそれぞれ好きなように食べたい物を取り口に入れた。


「お!やっぱウメーーなここの飯は!」


「おいしい!この世界に来ても日本食が食べれるなんて、ウゥッ」


「いやーー自分で言うのもなんだけど自分の作る飯は絶品だな」


 それぞれ満足気な表情とことばを出して箸を進める。


 カオルはこの焼きそばが相当気に入ったのか、涙目でズルズルと音を大きく立てながら一気に麺を啜った。あれ!良く見たら鼻水垂れ流してるぞコイツ!?


「おいカオル、いくら美味いからってかわいい顔を崩してまで食い付かなくても」


 俺がカオルの食い方に注意をしたら店長が首を横に振って止めた。


「おいしい、本当においしい!」


「お代わりはあるからな、遠慮せずに頼めよ」


「はい!ありがとうございます!」


 カオルが泣きながら飯を頬張る姿を見た俺は注意するのを辞め、彼女を好きにさせてそのまま食事を進んだ。


 食事を終えると俺たちは肩の力を抜いて、コーヒーを飲みながら一息着いた。


 食べ始めた時涙や鼻水をこぼしながら口に入れてたカオルも、今じゃ顔をお手拭きで洗い落ち着いている。


「店長さんなんかすみません、こんなにご馳走してもらって、それもタダで」


「別に気にすんな!それでお前さんが元気になれば今日はそれで充分だよ」


 カオルは飯を作ってくれた店長に日本人らしく一応謝りを入れるが、店長はそんのを吹き飛ばすぐらいの笑顔で彼女の肩を軽く叩いて励ました。


 ふと店長はカオルにある事を訪ねてきた。


「カオル、お前はどんな職業に着きたいんだ?」


 カオルはキョトンとした顔で。


「え、私はそうですね、今は無職で無敵なので取り敢えずまずは日雇いでーーーーーー」


「いやそういう意味で言った訳じゃねえんだ!」


「え??」( ・◇・)


 こいつ何大口開けてアホの顔で反応してんだ!マジで店長の言ってる意味が解ってねえのか!?


「カオル、店長が言ってるのは稼ぎじゃなくてステータスの事を言ってるんだ!ここに来る前に話してただろ?」


 俺の説明を聞いたカオルは片手を顎に当て、真剣な眼差しと表情で数秒考え込む。


 そんなに難しい事じゃねえだろうが!!


「あっなるほど!そういう事か!!」


 話に理解したカオルは両手をポンッ!と可愛く叩いて自信満々な顔で宣言した。


「私、この世界で料理人になってレベルやスキルを高めていきます!」


 カオルのこの言葉を受けた俺は神妙な顔で。


「それ、ステータスの職業欄には入ってないぞ」


「えええええええええええええええ!!」


「ステータス職業てのは決められた物に割り当てられるんだ、全部に当てはまるもんじゃないんだ」


 ステータス職業について何一つ知らないカオルに俺は一から教え始めた。


「ステータス職業てのは所謂その人の特性なんだ、その人がいったいどういう人か、どういう事が得意なのか不得意なのか、それを見極めるためにある物なんだ」


 カオルは「ほうほう」と軽く頷いて相づちを打つ。


「だから自分を見つめて、しっかりと考え、職業を選ぶんだ、自分の経歴を背負ったりするからな」


「------はい、わかりました!」


 俺が釘刺すように強く言うとカオルはこれを強く受け止めてくれた。


 説明を少ししたら店長が割り込むように別の事を説明した。


「職業に着いても実際に働く事になれば関係のない事にだってなるんだ」


「そうなんですか!?」


「そうだ、俺のステータス職業は錬成師だが今は町のどこにでもある料理屋の店主をやっている」


「店長の言う通り、ステータス職業はその人の特性で実際に働くのは別になるんだ、俺は魔術師だが今はパーティー業が生業だしな、あと誰でも着けるやつと資格や功績を得ないと付けれない職業があるんだ」


「そうなんですか!」


 魔術師になるには学院に入り数年勉強して複数の資格を取らなければいけない。アリシアがなっている勇者は多くの人々を貢献した実績を幾度も行い、それを政府や王族に認められて着くことが出来るのだ。


 俺はカオルに尋ねる。


「カオル、お前は何が得意なんだ?得意な方と合った職業を着けばレベルは上がりやすいからな」


「自分の、得意なことーーーーーー」


 カオルは自分が何が得意で向いているのか、数秒間口を閉じ自問をするとハッキリと答えた。


「全然わかりません!!」


 俺と店長は少し腰を抜かした!


「ま、まあ今日ここに来たばかりなんだからゆっくりすればいいんだ、店長もそう思うだろ?」


「そうだな、ゆっくり考えれば良いんだよ!急ぎは禁物だ!!」


 こんなハッキリ言うやつ初めて見たぞ!カオルってもしかしてバカ?生粋のおバカさんですか!?


「それじゃあ私は当分無職ですね、でも稼ぎはどうしたらいいんですか!?」


「稼ぎか、まともな職に就こうとしたらそれこそステータス職業をちゃんと着けないと雇ってもらいにくいし、でも60万もあるんだから今すぐにでも稼がなきゃいけない訳でもないだろ?」


 60万ポルドもあれば一泊5千ポルドの宿に泊っても2か月は余裕を持てる、その間にステータス職業を着けてどこかのパーティーか普通の仕事に就けばこの世界で安定した生活を送れることが出来る。


 俺はカオルの事は知らないが彼女がこの世界で上手く溶け込むまで、それか独りで大丈夫、と言うまで俺はこいつの面倒は見るつもりだ。


 俺がそう考えているとカオルは机にある自分のコーヒーを眺めて何か考えていた。


 考え終わると目線をコーヒーから俺と店長に向けて宣言した。


「キリヤさん、店長さん、私、お店を開いて仕事をしたいです!」


「お店って何の?」


「料理です!私の実家は料理屋で昔から接客から仕込みまで、なんでも手伝いました!なのでこの世界で私が活かすスキルは料理なんです!!」


 カオルは真剣な表情で語っている。これは本気だ、恐らく料理屋の下で生まれ育ったのは本当のことだろう。


 この言葉に店長は疑問を顔に浮かべながらカオルに問いだした。


「店を開くってのは俺は反対しないが、店とか食材の仕入れとかそういう頭金は今からどうするんだ、60万だけじゃ開くのは難しいだろ?」


「はい確かに店長さんの言う通りまずは頭金の確保が優先です、今の私の発言は漠然としていて説得力なんて物はありません、でも私が持っている技術はそれしかないんです、------だから」


 店長からの問いにカオルは顔色を変えずに真っすぐな瞳で答えた。これを受けた店長は。


「そうか、それなら全力で応援するよ、店を開くって言うんなら料理ぐらいはできるんだろうな?」


「もちろんできます!」


 それを聞いた店長は席を立ち、カオルにある事を指示した。


「カオル、今からここで料理を一品を俺とキリヤに作って出してみろ、同業者としてお前の腕を今すぐにでも見てみたいからな」


「・・・・・・はい、わかりました!」


 カオルは真剣な眼差しで店長からの指示をしっかりと受け答えた。


「よしそうとなりゃあ早速厨房に入るぞ!」


 店長の言葉にカオルと俺は席から立ちあがり、また厨房へと向かった。

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