カオルのステータス職業とクエストの報酬の受け取りの為に付いて、役場に行ったはいいが。
「あーーーーどうしよう、どれにしよう、どうしましょったらどうしましょう」
「お前、なりたい職業を決めたからここに来たんだよな!!」
役場に着いて受付場に来て、いざ就業かと思えば「ちょっと待って!」と言い、またここで選び悩んでいやがる!
それも30分悩んでいやがる!もうさっさと決めろよホントに!
まあ受付でそんなに長く居座ると他人に迷惑なので、カオルが悩み出した直後に受付嬢の仕事がちょうど上がったソフィーに連れてもらい3、人で併設してる酒場の机で座ってカオルの選択を待っていた。
昼間の酒場は人がいるが、大半は学生か仕事のないパーティーメンバーたちが中心だが席は空いてる方が目立つぐらい少なく、夜に比べるてうるさくないのでカオルの悩み声が普通に端から端まで届いてしまう。
30分も待たされて悩み声を聴かされるせいか、俺の隣に座っているソフィーがしかめっ面で人差し指を机に、突くように強く叩いて音を立てる、早く決めなさいよ、て言葉に出なくてもそのしぐさで見てる人誰もが伝わってくる。
俺はソフィーの機嫌を直すべく、何か彼女におもしろい話題を振ってその場しのぎでも場を和らげよう。
「なあソフィー、そういえばここ最近、面白い事はあったか?俺も最近面白い事がーーーー」
「アンタがアリーのパーティーから追い出されて、今目の前にいる頭のおかしい日本人の子と組んでいることよ」
「え!もう知ってるの!?」
「知ってるも何も、一昨日ここでアリーから出て行くよう頼まれてたのを普通に聞いてたわよ、まさか本当に出て行ってすぐこんなのとくっつくなんて」
一昨日の話聞いてたのかよ!あの時は周りがいつもののようにどんちゃん騒ぎだったから、誰も聞いていないかと思ったんだけど。
ソフィーは驚く俺を余所にため息をこぼして話を続けた。
「というか、こんな場所でわんわん泣いてる女の子を第一に寄って来て、一緒に一杯飲んだらここから出たかと思えば数時間後に戻って来て、レベルの見合わないクエストを受けるんだもの、余裕で目立つわよあんなの」
そう言ってソフィーは目を細めて手入れされてる綺麗な長髪の赤髪を人差し指に絡め、その指先をキスするかのように甘噛みする。
彼女自身、元から美人でモデルみたなスレンダースタイルなため、巨匠が描いた絵画の人物が飛び出したかにも思えてしまう。
「そうだよな、あんなのその場にいた誰もが記憶に焼き付いちゃうよな、しかもカトレアさんも喧嘩してたし」
「そうそう、カトレアはその後、謹慎受けちゃったから」
「ああやっぱり」
カトレアさんが謹慎を受けるのはいつものの事だ、そんなに驚く必要なんてない、俺もあの人に喉元にキックを入れられて文字通り死にかけたからな。
でもあの人にそんなひどい目に遭わされても不思議と憎まないのは何でだろう?胸が大きいからかな?
カトレアさんは受付嬢に比べて肌の露出が多い服装をしてたからな、長身でスタイルが良すぎるからどんな暴力でも赦されるに違いない。
でもあんな暴力な面を出すから男が出来ないのは当然だよな!頑張れカトレアさん!まだ27歳だから未来はまだあるぞ!
「それで彼氏のショウヘイ君に泣きながら慰めて貰っててさあ、その慰め方が結構おもしろいのよ」
「エッ!!ショウヘイと付き合ってるの!?」
「そうよ、まさかカトレアとショウヘイ君が付き合ってるの知らないの!?同じメンバーだったのに!?」
嘘だろ!?あのショウヘイとカトレアさんが!あの2人が恋人同士なんて想像できねえぞ!!
そういえば一月前から、ショウヘイの奴、夜中に良く誰かと長くボイスチャットしてたな。誰と話してんだ?て訊いてもアイツは最近できた友達の日本人ですよ、て返したけど、その時は微妙に頬が赤くなってた気がするな。
あれはカトレアさんとやり取りしてたのか、シャルロットとミスリットからのアプローチを何度受けても反応しなかったのはそういう理由だったのか、2人とも残念だったな。
「てかショウヘイ、歳は16でカトレアさんは27だったよな?それって駄目だったんじゃないか?」
「普通にダメよ、ショウヘイ君まだ18へと大人になってないから付き合ってるのは犯罪よ」
「マジかよ、ショウヘイここに転生して3ヶ月しか経ってないのに」
「時間なんて関係ないわよ、カトレアなんて27年間も彼氏が出来てなかったのよ、27年も!」
「まあ、そうだよな」
付き合うのに時間は関係ないてのはソフィーの言う通りだな。
「それで昨日ボイチャでね、カトレアが「今日アリス君に男なしってひどい事言われたの、私にはショウちゃんがいるのに!」て言ってたのよ」
殴ったのは言わないんだな、都合よく教えやがってあの年増。
「そしたらショウヘイ君ね、「僕がいるから気にしないでよ、2年後は僕の苗字はカトレアと同じになってるから、そんな酷い言葉を言われても僕たちが1つなのは変わらないから、カトレア」て返してさあホントおもしろかったのよ」
ソフィーは満面の笑みで昨日の2人の状況の話をおもしろいと思って言ってるだろうけど、俺は驚きの連発でおもしろさなんか微塵も感じないぞ!
てかショウヘイ、アイツ俺たちの前じゃカタリナさん、て呼んでるのに2人きりの時は呼び捨てかよ!相当イチャラブしてんなオイッ!!
「カトレアと同じ苗字、てショウヘイは婿養子になる気なのか?アイツの苗字は日本人じゃ、かなり珍しいてか今まで見たことも聞いたこともないから勿体ないと思うんだけど」
そう思った俺だが、ショウヘイは苗字で呼ばれるのも聞くのも嫌がってたな、ショウヘイの苗字て結構カッコイイし親から授かった物だから大事にして欲しいとは思うな。
「まあこれカトレアから秘密にして、て言われたけどね」ソフィーは微笑む。
最低だなお前!!
おもしろいどころか、心をひどく揺さぶる話題を振られて落ち着かなくなったよ!
「そういえばキリヤ、あなた今どこに住んでるの?」ソフィーが今の俺の事情を尋ねてきた。
「今、て昨日はクエストの依頼主の家に泊ってたから、寝床はまだ決まってないな」
キンチョウの寝室は2部屋だけで、店長とカオルが使ってるから埋まってるからあそこは泊まれないな。
「まあ今夜は金をそこまで使いたくないから協会の無料宿舎に泊るか、それが出来なかったら野宿だな」
「それじゃあ私と同棲する?」
は?
ソフィーは耳を見せるように、片手で優しく髪を耳の裏にまとめて、目を輝かせて上目遣いで同棲の提案をしてきた。
は?
「なんでお前と同棲するんだ?」
俺は質問返しをした。するとソフィーは甘味な笑みと声で答える。
「私、今住んでる部屋が大きくて、一人じゃ寂しいし厳しいの、だからいっしょに住んで欲しいの?」
「逆に一緒に住んでて厳しくならないか?それに一人の時間が無くなるし、プライバシーも無くなっちゃうんじゃないか?」
「ううん、キリヤといっしょだったら厳しくなるより、むしろ楽しくなるよ、キリヤだって安心して寝れる部屋が欲しいでしょ?外で寝るよりは安全でプライバシーも護れると思うけど」
ふざけるな!さっき秘密にして欲しいと言われた事を、平然と他人に晴らすような奴といっしょに過ごしたってプライバシーの無さは野宿と何ら変わんねえよ!!
ソフィーとはかれこれ数年の仲だ。こいつが俺にどんな感情を向いているのかは知っている、でもソフィーが例え美人だろうと、俺の事が好きだろうと、心の底から抱きしめくれる相手だろうと。
お前と同棲するのはかなり気が引ける。
「家賃とかご飯とか、生活の全ては私が全部やってあげるから、あなたは魔術の研究に没頭するだけで良いから、いっしょに住もうよ、ねっ!」
とんでもねえ条件を出してきやがったぞ、こいつ!そんな条件下の環境で生活したら誰もがダメ男に仕上がっちゃうだろ!
それにソフィーの瞳がハートマークになって目がとろけ初めている。こいつからの誘いにはとにかく断ってやる!
俺とソフィーが目の前でこんな事をしてるのに、そういうのなんて無かったように職業選びに悩み、没頭してたカオルが突如机を思いっきり叩いて。
「よっしゃああああああ!これに決めたああああああ!!」
突然大声で叫ぶ物だから俺とソフィーは一瞬、肩を上げて驚いて、静かな酒場に鳴り響いたから周りの客やウェイトレスさんたちが動きを止めてこちらに視線を向けた。
「何になりたいんだ?」
「ふっふーーん」、と鼻を高く自信満々にカオルは答える。
「今日から私は冒険者へとなります!」
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